【プーチンも注視する米大統領選】トランプ・バンス政権がウクライナ情勢にさらなる混乱をもたらす理由

AI要約

2024年7月29日付のフィナンシャル・タイムズ紙に掲載された記事では、トランプ政権がウクライナに対して中立化を提案しており、これがロシアにとって望ましい状況となる可能性があると指摘されている。

ロシアはウクライナの一部を占拠しており、領土問題が争点となっているが、現状ではウクライナが全ての領土を取り返すのは困難であると見られている。ウクライナ内でも領土譲歩についての議論が活発化している。

ウクライナはNATOへの加盟を望んでおり、同盟の安全保障を求めているが、ロシアはウクライナ全土の従属を要求しており、和平への障害となっている。プーチンは米国の選挙結果に注目し、トランプ政権の態度次第で今後の動きを決定する可能性がある。

【プーチンも注視する米大統領選】トランプ・バンス政権がウクライナ情勢にさらなる混乱をもたらす理由

 2024年7月29日付のフィナンシャル・タイムズ紙で、同紙のギデオン・ラックマンが「トランプがウクライナに与える本当の危険。中立ウクライナというロシアの要求に同意することはウクライナをモスクワが好きなようにすることである」との論説を書いている。

 トランプ再選によるウクライナへの「裏切り」の憶測は、領土の一部のロシアによる併合の受諾と武器供与の停止を関心事にしている。しかし、もう一つの問題、すなわちウクライナの中立が重要な問題として出てきている。

 共和党副大統領候補JDバンスは6月、中立ウクライナに賛成であると述べた。一見、中立ウクライナは興味深い選択肢に聞こえる。

 フィンランドとオーストリアは冷戦の間中立であった。両国とも民主的でソ連圏外にいることができた。しかし、バイデン政権は、中立ウクライナへのロシアの要求には警戒的である。

先週、サリバン米国家安全保障補佐官は、「中立化されたウクライナをロシアが欲していることは明らかである、プーチンはまだウクライナを従属させようとしている。われわれはそうさせない」と述べた。

 公の議論の多くは領土の問題に関する。ロシアは、今占領している領土に居続けることを主張する。ウクライナは、クリミアを含む完全な領土の回復を主張する。

 戦争の推移は予測できないが、現状を見ると、ウクライナが全ての領土を取り返すのは難しい。ウクライナも西側も暗黙にこれを知っている。平和のために領土的譲歩をすることがウクライナの中で一定の支持を得て来ている。

 和平への最大の障害は、ロシアがウクライナ全土の従属を要求している事実にある。ウクライナは、北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、同盟の安全保障の確約を望んでいる。直近のNATO首脳会議は「ウクライナの未来はNATOにある」と宣言したが、同時にそれは「同盟国が合意し、条件が満たされた時にのみ起こる」と付け加えた。

 今、プーチンは米国での出来事を待っている。バイデン政権はウクライナの中立化に同意しないだろう。しかしトランプ・バンス政権は同意するかもしれない。米国の選挙の結果が決まっていない限り、プーチンは戦いを続ける動機をもっている。

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