中国から逃げろ─中国女性のあいだで「30代からの海外留学」がブームのワケ

AI要約

中国の独身女性のあいだで、30代になってからの海外留学がトレンドとなっている。彼女たちは海外での高等教育を求め、SNSで情報を共有している。

中国での未来に希望を持てないと感じる女性も多く、社会のプレッシャーから逃れるために海外留学を選択している。

海外留学は彼女たちにとって生存戦略であり、自分らしく生きていくための重要な手段となっている。

中国から逃げろ─中国女性のあいだで「30代からの海外留学」がブームのワケ

中国の独身女性のあいだで、30代になってからの海外留学がトレンドになっていると、中国紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」などが報じている。彼女たちは欧米の大学で修士号や博士号を取得することを目指しており、中国のSNS「小紅書」で情報を共有しているという。

背景には、中国での未来に希望が持てないという思いがあるようだ。上海でコンサルティング会社を運営していたクラウディア・ケは2023年、自身の会社を売却し、フランス・ブルゴーニュ地方にあるバーガンディ・スクール・オブ・ビジネスに入学。彼女にとって、留学の直接の引き金となったのは、新型コロナウイルスによるロックダウン期間中の当局の対応だった。

長期間にわたり家に閉じ込められたことによるストレスと、防護服を着た当局者が市民の家のドアを蹴破るといった状況に耐えきれず、彼女は10日間悩んだ末、「行かなければならない」と留学を決意した。

「中国の女性たちは、たとえ外国で将来どう生きていくかという明確なビジョンがなくても、海外で高等教育を受けて中国から逃げようとします」と、ケはサウス・チャイナ・モーニング・ポストに語る。

彼女たちは小紅書で、「歳をとってからの海外留学」を意味するハッシュタグを使って盛んに情報交換しており、このハッシュタグは2024年6月下旬の時点で5600万回閲覧されている。ケはこの1年間で、海外留学を目指してアドバイスを求める女性たちから、2000を超えるメッセージを受け取ったという。

彼女たちを海外留学へ向かわせる大きな要因のひとつが、中国社会における女性へのプレッシャーだ。

同紙は、求人サイト「Zhipin.com」がおこなった2023年の調査結果を紹介している。それによると、中国で仕事に応募する際、61%の女性が婚姻の状況と妊娠の有無について聞かれたという。また、51%の女性が、「年齢がキャリアの見通しに影響を与えている」と回答した。

米メディア「ビジネス・インサイダー」は、ケンブリッジ大学で博士号を取得するため、37歳で中国を離れたという女性の投稿を紹介している。中国では22歳までに学校を卒業し、28歳までに結婚、30歳までに子供を産まなければ、自分や家族が恥をかくとされるのに対し、「英国では誰も私に年齢を聞いてこない。そんな数字のことは誰も気にしていない」と彼女は書いている。

また、36歳でフランスに渡ったという女性は、現地でフランス語を学んでいるとき、自身がクラスで最年長であることに気づいた。彼女は「歳をとっているというのは、仕事の経験値があり、自分の興味についてよりよく理解しているということ。だからこそ、自分の進路を自信をもって描くことができる」と小紅書に投稿した。

「(中国の)女性たちが海外に留学するのは、労働市場における女性への偏見に対する戦略的な対応なのです」。サウス・チャイナ・モーニング・ポストの取材にそう話すのは、海外に住む中国人女子学生を調査したメルボルン大学の准教授、フラン・マーティンだ。

この世代の女性たちは、若い頃は一人っ子政策のもと、自発的にキャリアを積み、自身を大切にするよう言われて育った。しかし大人になったいま、少子化への懸念から政府に結婚と出産を奨励され、27歳を過ぎて独身でいると社会から「売れ残り」のレッテルを貼られるという、矛盾した状況に置かれている。

海外留学は、彼女たちが自分らしく生きていくための生存戦略といえるだろう。