米FRB、9月利下げ視野 円安局面は一服か 金利見通しに不透明感も〔深層探訪〕

AI要約

FRBは8会合連続で政策金利を据え置き、次回の9月会合での利下げが検討される可能性が高いと示唆している。

米国の金融政策の変化と日銀の追加利上げにより、歴史的な円安局面は収束し、円相場は一服した。

パウエル議長は、インフレ率の低下や失業率の上昇を考慮し、FRBの政策転換や利下げの可能性を強調している。

米FRB、9月利下げ視野 円安局面は一服か 金利見通しに不透明感も〔深層探訪〕

 米連邦準備制度理事会(FRB)は7月31日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、8会合連続で政策金利を据え置いた。パウエル議長は記者会見で「(次回の)9月会合で利下げが検討される可能性がある」と明言。日銀の追加利上げと合わせ、「円安基調は一服した」(邦銀関係者)との見方も浮上するが、円の対ドル相場を左右するFRBの金利動向には不透明感も漂う。

 ◇利下げ近づく

 「利下げが妥当となる地点が近づいている」。パウエル氏は会見でこう述べ、「FOMCの総意」として政策転換が視野に入ってきたことを再三強調した。

 パウエル氏が利下げ検討に言及したのは、大幅利上げがようやく経済に効いてきたとの感触が得られているからだ。FRBは、約1年前から政策金利を2001年以来の高さとなる年5.25~5.50%で維持。その間、インフレ率は大きく低下する一方、失業率は直近の4.1%にじわりと上昇した。

 パウエル氏は足元の政策金利が「明らかに景気抑制的だ」と強調。「1年前よりも、労働市場とインフレへのリスクを均等に検討する必要がある」と説明した。

 今回のFOMC声明では、物価と雇用の「両リスクに注意を払う」と明記された。前回声明の注意対象はインフレのみだった。FRBは政策運営の軸足をインフレ退治から、成長維持と物価安定を両立させる経済の「ソフトランディング(軟着陸)」に移した格好だ。

 ◇歴史的円安収まるも

 日銀の追加利上げ決定や、米利下げの可能性が示唆されたことを受け、歴史的な円安局面はひとまず収束したかに見える。円相場は8月1日の東京外国為替市場で一時1ドル=148円台半ばに上昇。約37年半ぶりの円安水準である161円90銭台に下落した7月上旬から、10円以上も円高が進んだ。

 ただ、日米ともに金融政策の調整は緩やかにとどまり、金利差が開いた状態は当面続くと見込まれる。前出の邦銀関係者は「米国のインフレ鈍化が進み、FRBの利下げ回数見通しが(年内残りの全会合の)3回に増えなければ、一段の円高進行は期待できない」と指摘する。

 6月の前回FOMCでは、四半期ごとに公表される政策金利見通しで、年内1回の利下げを想定していた。しかし、パウエル氏は今回、「新たな見通しは9月会合で示す」と発言。利下げ回数は「経済動向次第で、ゼロから複数回のうちのどれかだ」と述べるにとどめた。(ワシントン、ニューヨーク時事)