【解説】「極左」VS「犯罪者」トランプ氏とハリス氏はどっちが優勢か?バイデン氏大統領選「撤退」から1週間の現在地

AI要約

バイデン大統領が再選の断念を表明したことで大統領選挙が再び接戦の様相となっており、ハリス副大統領が後継として支持を受けている。

バイデン大統領は精彩を欠いた言動が続く中、NATOサミットでのミスなどが相次ぎ、撤退は不可避との見方が強まった。

ハリス副大統領も評価を落とし続けてきたが、バイデン氏の撤退により支持が広がり、大統領選挙の行方が不透明となっている。

【解説】「極左」VS「犯罪者」トランプ氏とハリス氏はどっちが優勢か?バイデン氏大統領選「撤退」から1週間の現在地

バイデン大統領が民主党内の撤退圧力に屈する形で7月21日に再選の断念を表明してから1週間が過ぎた。バイデン氏は6月のテレビ討論会の失態後も、何度も「選挙戦を続ける」と訴えたが、あと4年本当に続けられるか国民の不安を払拭できなかった。それ以上に大統領選挙と同日に選挙を抱える連邦議会議員からの批判が噴出。結果として身内から引きずり降ろされた形だ。

一方、アメリカ世論は、バイデン氏の撤退を好意的に見る向きが強く、後継に支持したハリス氏は、バイデン氏で離れていた旧来の若者、黒人層の支持を回復し、勢いをみせている。トランプ氏は暗殺未遂事件で、強いリーダーとして圧倒的な印象を付けたが、民主党の劇的な候補者交代に注目を持っていかれた感は否めない。一時は決着が付いたかに見えた大統領選挙の行方は、投票まで100日を切る中で、再び大接戦の様相となっている。

バイデン大統領は就任後、精彩を欠いた言動を指摘されてきたが、それでも予備選で勝利し、事実上の大統領候補を確実にした背景には、民主党内にバイデン氏を凌駕する人材がいなかったことも大きい。実際に、過去の多くの世論調査ではバイデン氏はハリス氏よりは支持されていた。流れが変わったのは、6月27日に行われたテレビ討論会だ。冒頭からバイデン氏は、かすれ声、言い間違えをし、トランプ氏の発言中には口を開けたまま目を見開き、国民の不安を増大させた。

翌日以降の演説では力強さこそ取り戻したが、7月9日から11日にかけてワシントンで開かれたNATOサミットで、ウクライナのゼレンスキー大統領を「プーチン大統領」と呼び、ハリス副大統領をトランプ氏と混同する痛恨のミス。もはや撤退は不可避との見方が強まった。

一方、バイデン政権の取材を行う中で、ハリス氏は初の女性・アフリカ系・アジア系として副大統領に就任後、相次いで評価を落とし続けてきた。スタッフの相次ぐ辞任、国政経験の乏しさによる議会との調整不足。南部国境の移民政策を担当するも、現地入りが遅れ対応に苦慮すると実力に疑問符が付いた。

ただ、「初の女性副大統領への注目の高さ(米政府関係者)」というように、必要以上に目立ったことで、批判が強まった感も否めない。ただ、バイデン氏が撤退を表明し、ハリス氏を後継として支持すると状況は様変わりした。

バイデン氏が撤退する前、政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめた世論調査の平均は、トランプ氏の支持が47.9%に対して、バイデン氏は44.8%と差を付けられていた。この状況は、ウォールストリートジャーナル(7月23日~25日)の調査で、トランプ氏49%、ハリス氏47%、ニューヨーク・タイムズ(7月22日~24日)でトランプ氏48%、ハリス47%と変化した。さらに、モーニング・コンサルト(7月22日~24日)のサンプル数が1万1297と大規模な調査ではハリス氏46%、トランプ氏45%と支持率でリードしたのだ。ただ、数字は誤差の範疇で、両氏は大接戦を繰り広げているとの見方が強い。

ハリス氏への追い風は、今後の民主党の副大統領候補の指名や、8月19日から4日間行われる民主党大会までは続くと見られ、勝負は9月以降の状況次第だ。