米紙の報道「日本がFAXを捨てられないのは『時代遅れではなく、実は未来的』」

AI要約

日本で古いテクノロジーがなかなか使われ続ける理由として、現実的な懸念と日本独自の価値観が関係している。

テクノロジーの更新が遅れている背景には、過去のITシステムへの投資意欲の欠如が挙げられる。

また、政府によるアナログ規制の影響も大きく、政治的意思が必要だった。

米紙の報道「日本がFAXを捨てられないのは『時代遅れではなく、実は未来的』」

日本でいまだFAXやフロッピーディスクなど旧来のテクノロジーが使われている「本当の理由」を米紙が探ってみた。すると、「安全第一」や「ものづくり」など日本独自の価値観が関係していることが見えてきた──。

河野太郎デジタル相は2022年、ある時代遅れのコンピュータハードウェアに宣戦布告し、注目を集めた。フロッピーディスクだ。

河野は、日本政府はいまだに約1900件もの行政手続きにフロッピーディスクやCD-ROMの使用を求めているとソーシャルメディアに投稿し、それを廃止すると誓った。

そして2024年7月初め、河野はロイター通信に対し、こう勝利宣言をした。

「6月28日、我々はフロッピーディスクとの闘いに勝利しました!」

そんな闘いが必要だったこと自体が驚きかもしれないが、フロッピーディスクがなかなか手放せないのは日本だけではない。ノルウェーの医師らは2015年時点でまだフロッピーディスクを使っており、米国の核関連プログラムでも2016年時点でそうだった。

ブリティッシュ・エアウェイズのボーイング747-400型機は、2020年まで重要なアップデートをフロッピーディスクで受け取っていた。サンフランシスコでは、いまだ市内の鉄道システムで使われている。

それでも、日本の古いテクノロジーへの依存は際立っている。この国は長い間イノベーションで知られ、日本といえばロボット、音が鳴るトイレ、超高速の新幹線など、近未来的なユートピアのイメージだ。

その一方、スマートフォンの時代になっても折りたたみ式の携帯電話が普及し続け、職場でFAXを廃止しようとすると抗議の声が上がる国でもある。

なぜ、こんな矛盾ともいえる状況が生じているのか?

専門家らに話を聞くと、それはテクノロジーに対する現実的な懸念と日本独自の価値観の両方を反映しているようだ。

カーネギー国際平和財団のシニアフェローで日本プログラムの責任者を務める櫛田健児は、新技術の導入が遅れている現実的な理由として、1980~90年代に政府や企業が投資したITシステムを更新する意欲の欠如などを挙げる。

日本政府はまた、さまざまな公的手続きについて、フロッピーディスクやCD、あるいは手作業によるデータ転送など、時代遅れに見えるプロセスを義務付ける「アナログ規制」を何千項目も設けていた。こうした規制を見直すには「政治的意思が必要でした」と櫛田は言う。