【バングラデシュ】大規模衝突から1週間、なお「不安」抱え

AI要約

バングラデシュの首都ダッカで公務員の採用制度に抗議する学生と治安部隊の大規模な衝突が続いた1週間。デモの様子や外出禁止措置、日本人への影響などが報告されている。

デモが激化し、通信遮断や外出制限が行われる中、学生らの不満が最高裁の判断で沈静化へと向かい始めた。日本企業や駐在員も影響を受けつつも徐々に活動を再開している。

しかし、外出制限は28日時点でも続いており、安全やビジネス環境の回復を求める声が高まっている。

【バングラデシュ】大規模衝突から1週間、なお「不安」抱え

 公務員の採用制度に抗議する学生と治安部隊の大規模な衝突から1週間。バングラデシュの首都ダッカはデモ隊の鎮圧によって平穏を取り戻しつつあるものの、政府による外出制限は続き、住民は不安を抱えて暮らしている。現地日本人への取材をもとにデモの経過を振り返った。

 バングラデシュは、公務員の採用枠のうち30%を1971年の独立戦争を戦った兵士の家族に充てている。この制度には批判があり、政府は2018年に廃止すると決めたが、今年6月に高等裁判所が政府決定を違憲とする判断を下したことが、学生の反発を招いた。ダッカをはじめ各地で学生のデモ隊と治安部隊が衝突し、現地報道によるとこれまでに150人以上が死亡した。

 ■ネットは18日夜に突然遮断

 抗議活動は7月15日の週から激しくなった。16日に学生が警察官に射殺されたことを機にデモ隊の不満は一気に爆発。政府機関の建物に火を放ったり、警察官を襲ったりするなど、18~19日に最も先鋭化した。

 ダッカのバリダラ地区は、日本をはじめ各国の大使館や駐在員の住居が集まる。デモの舞台にはならなかったが、近隣で激しい衝突があり、爆音や催涙弾の発砲音が断続的に聞こえたという。

 治安の悪化に加え、住民を動揺させたのが通信の遮断と外出禁止措置だ。18日夜に予告なくインターネットが止まり、通信手段は電話とテキストメッセージ(SMS)に限定された。20日午前0時からは政府による外出禁止措置が始まった。

 「いま何が起きているのか分からない。ネット遮断による情報不足が、在留邦人の方々を最も苦しめた」

 日本貿易振興機構(ジェトロ)ダッカ事務所の安藤裕二所長はそう振り返る。外出禁止令のために外に出られる時間が1日数時間に限られたことも、「水や食料がいつか尽きるのでは」という不安を助長した。

 日本政府によると、23年時点で現地に進出する日系企業は約310社、在留邦人は約1,100人に上る。日本人が被害に遭ったという情報は寄せられていないが、駐在員の一部が日本やタイ、シンガポールへ退避する動きが見られた。

 ■外出制限は28日も継続

 デモ隊の抗議活動は、最高裁判所が21日に「公務員採用の優遇枠を30%から5%に縮小し、実力ある候補者に広く開放すべき」との判断を示したことで沈静化へ向かっている。遮断されていたネット通信は、23日夜から段階的に復旧し始め、28日午後からはモバイルインターネット(携帯電話のデータ通信)が再び使えるようになった。外出できる時間は日に日に長くなり、一時的に営業活動を止めていた日系企業は、多くが24日から出社を再開している。

 ただ、ダッカでは28日時点でもなお、外出可能な時間が午前7時から午後6時に限られている。状況がデモ前に戻ったとは言いがたい。

 ジェトロの安藤氏は「通信だけでなく、一刻も早く治安とビジネス環境も平時に戻ってほしい」と訴えた。

 日本の外務省は21日、バングラデシュの危険情報のレベルを引き上げ、現地への不要不急の渡航を控えるよう求めている。