高まるロシアの脅威、欧州各国は徴兵制に回帰

AI要約

多くの欧州諸国がロシアの脅威に直面し、兵役制度を再導入または拡大している。ノルウェーやスウェーデンなど一部の国では徴兵制が義務化され、ドイツも欧州で紛争勃発時の計画を更新している。徴兵制に関する議論が活発化し、戦争に備えるための新たな取り組みが始まっている。

一方で、徴兵制は依然として不人気であり、NATOは目標の動員数に苦戦している。機動力のある現代的な軍隊への転換が必要であり、フィンランドやスウェーデンなど一部の国は予備役を重視し、短期間で大規模な動員が可能な体制を整えている。

欧州諸国の兵役制度に変化が起きる中、戦争リスクの高まりや新たな安全保障環境に対応する取り組みが急務となっている。

高まるロシアの脅威、欧州各国は徴兵制に回帰

(CNN) ロシアの脅威が高まる中、複数の欧州諸国は防衛力強化を目的とした政策の一環として兵役義務を再導入または拡大した。

30年間米陸軍将校を務めた外交政策研究所のユーラシア研究責任者、ロバート・ハミルトン氏は「戦争への動員方法や軍備の生産方法、新兵の募集・訓練方法を調整しなければならない可能性があるという認識に至りつつある」と述べた。

北大西洋条約機構(NATO)の欧州連合軍最高司令官を務めたウェズリー・クラーク退役将官は、ロシアのプーチン大統領が「ついにウクライナで公然と武力衝突に訴え」、ソビエト帝国の再建を追求したことで、欧州では大規模な戦争が発生するリスクが高まっていると話す。

同氏は「これはNATOにとって、防衛を再構築しなければならないという非常に切迫した警告」であり、再構築の取り組みには徴兵も含まれると指摘した。

冷戦終結後、多くの欧州諸国が徴兵制を停止したが、近年、一部の国、特にスカンジナビア諸国やバルト三国ではロシアの脅威を主な理由として徴兵制を復活させている。入隊を拒めば罰金が科せられたり、禁錮に処されたりする国もある。

ノルウェーは4月、野心的な長期計画を発表した。この計画では、国の防衛予算をほぼ2倍に増額し、徴兵された兵士、従業員、予備役2万人以上を軍隊に加えるとしている。

ストーレ首相は「新たな安全保障環境において目的にかなう防衛が必要だ」と述べた。

ノルウェーでは徴兵が義務付けられており、2015年にはNATO加盟国として初めて男女を同じ条件で徴兵した。

徴兵制に関する議論は、現在兵役を求めていない他の欧州諸国でも行われている。英国の保守党は総選挙で勝利した場合に兵役義務を導入するとの考えを示していた。

おそらく最も驚くべき変革は、第2次世界大戦の終結以来、軍国化を嫌悪してきたドイツで起きている。ドイツは冷戦以降初めて、欧州で紛争が勃発した場合の計画を更新。ピストリウス国防相は6月、新たな志願兵制を提案し、「29年までに戦争に備えなければならない」と訴えた。

戦略国際問題研究所の欧州・ロシア・ユーラシアプログラムの客員研究員シーン・モナハン氏は「議論が盛り上がりを見せている。そして、それが第一歩だ」「これは一夜にして起こるものではなく、大きな精神的転換だ」と指摘する。

誰もが招集に応じる覚悟ができているわけではない。例えば、リトアニア全国学生連盟の会長は、学生の間で兵役に対する意見はさまざまだと話す。

リトアニアは15年に「地政学的状況の変化」により兵役義務を復活させて以来、毎年18~26歳までのリトアニア人約3500~4000人が9カ月にわたり入隊している。

先の会長によると、学生たちはウクライナに物資を送る取り組みを始めた。「必ずしも徴兵を通じてではないが、若者の考え方は、より積極的になろうとする方向へと変化している」

徴兵制は一部の国では依然として不人気な話題だ。モナハン氏によると、NATOは1カ月以内に30万人を動員し、さらに6カ月以内に50万人を動員するという新たな目標を達成するのに苦戦している。

考えられる解決策は、より機動力のある近代的な軍隊だ。

NATOの最新加盟国の一つであるフィンランドは、90万人以上の予備役を動員する能力があり、28万人の軍人が必要に応じて即座に対応できる態勢にある。一方で平時のフィンランド国防軍は文官を含めて約1万3000人しか雇用していない。

ノルウェーと、NATOの最新加盟国であるスウェーデンも同様のモデルを採用しており、フィンランドほどではないが両国とも相当数の予備役を維持している。

ノルウェーと同じく男女平等の徴兵制を敷くスウェーデンは24年、約7000人を招集した。スウェーデン軍によると、25年にはその数を8000人に増やすという。