習近平が3年後も続投か、中国共産党の重要会議「三中全会」で描かれた“未来予想図”とは?

AI要約

中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)が開催され、習近平政権が推進する「中国式現代化」が注目された。

会議で採択された公式文書には、政府と市場の関係や中国の特色ある社会主義体制の重要性が強調されている。

過去の経済政策との比較から、今回の重要な変化やキーワードの変遷が明らかになっている。

習近平が3年後も続投か、中国共産党の重要会議「三中全会」で描かれた“未来予想図”とは?

● 「中国式現代化」の 推進をうたった三中全会

 7月15~18日、中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)が北京で開かれた。三中全会は歴史的に見て、経済政策や国家の方向性に影響を与えてきた重要な会議である。今回の三中全会は、「文化大革命」と毛沢東の死去を経て、市場経済と改革開放を推し進めていくきっかけとなった1978年の第11期三中全会、習近平政権が発足して最初に開催された2013年の第18期三中全会に次ぐ重要な会議として位置づけられた。

 習近平政権発足後という意味で、特に後者(第18期)と今回の会議の中身や論調がどう変化したのかを見極めることは重要である。過去の10年強において、同政権が何をしてきたのか、これからどこへ向かうのかの一端が見えてくるからである。

 その意味でいうと、最大にして最も重要な変化が、2回の会議が審議、採択した公式文書の題名に色濃く反映されている。見てみよう。

 第18期:『改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する中共中央の決定』

第20期:『更なる改革の全面的深化、中国式現代化の推進に関する中共中央の決定』

 一目瞭然であるが、「改革の全面的深化」に関しては10年の月日を経ても一貫、共通している。三中全会の公式文書という意味で目新しいのは、今回新たに加わった「中国式現代化」という文言である。

 筆者が本稿を執筆している7月22日時点で、すでに「決定」の公式文書は発表されている。そこには、「現在と今後の一定期間は、中国式現代化をもって強国建設と民族復興という偉大な事業を推進していくための肝心な時期である」と書いてある。

 筆者の理解によれば、「中国式現代化」とは、中国の特色ある社会主義体制を堅持し、共産党による一党支配とリーダーシップを益々強固なものにしたうえで、建国100周年に当たる2049年までに「社会主義現代化強国」を建設すべく邁進するプロセスのことを指す。

 「決定」は、ハイレベルな社会主義市場経済体制が中国式現代化にとっての重要な保障になるとうたっている。

● 「市場」の後退と 「安全」の台頭

 筆者は今でも鮮明に覚えているが、2013年12月に行われた三中全会の「決定」で次の文言が発表された瞬間が、習近平政権発足から現在に至るまで「市場原理に立脚した経済運営と改革開放」という意味で、特に西側資本主義社会に生きる関連機関、関係者にとって、中国経済への期待値が最も高かった時期だったに違いない。

 「経済体制改革は改革を全面的に深化させていくうえでの重点であり、核心的な問題は、政府と市場の関係をしっかりと処理することである。資源配分の過程で市場が決定的な役割を担い、政府がより良い役割を果たすようにする」

 市場の役割に関して、それまでは「基礎的」とうたっていたのを「決定的」に昇格させて意義は大きかったと言える。

 対する今回は、国有経済や国有企業の役割を重点的に取り上げる一方、市場の役割に関しては、「市場メカニズムの役割をより良く発揮すること」「資源配分の効率を最適化し、効率を最大化すること」「市場の秩序をより良く守り、市場の欠陥を埋めること」などと提起。文言から解釈すれば、「政府」と「市場」が逆転した形である。

 なぜならば、2013年に「政府がより良い役割を果たす」と言っていたのをそのまま「市場がより良い役割を果たす」に置き換えているからである。3期目入りした習近平政権で中国式現代化を推進していく中で、資源配分の過程で決定的な役割を果たすのは「党」というのが筆者の分析である。

 以下に、2013年と2024年の三中全会の「決定」文書(字数はいずれも2万字強でほぼ変わらない)におけるキーワードが出てくる回数を比較してみた。

 筆者が最も注目したのは、「安全」が24回から41回に増加し、「市場」が81回から55回に減っている点である。