フィリピンの市長は中国人のスパイだった?…当選時に見られた「フィリピン生まれ」とは思えない、数々の証拠

AI要約

フィリピン・バンバン市のアリス・グォ市長が、身分を偽装した中国人である可能性が高まり、世界を驚かせている。中国共産党や人民解放軍との深い関係が指摘され、市長の違法活動との関連性も浮上。

市長の身元偽装が明らかになり、偽造された指紋や正確な出生証明書のなさが疑いを深めている。市長は違法カジノや人身売買などの犯罪に関与していた疑いも浮上。

市長は18年間バンバン市に住んでいたと主張していたが、実際は異なるフィリピン人が同名で存在し、中国や香港の団体から支持を受けていた。父親がスパイ活動に関与している可能性も指摘されている。

フィリピンの市長は中国人のスパイだった?…当選時に見られた「フィリピン生まれ」とは思えない、数々の証拠

フィリピン・バンバン市のアリス・グォ市長が、身分を偽装した中国人である可能性が高まり、世界中を驚かせている。かねてから世界各地で中国人スパイの存在が指摘されてきたが、これもそのひとりなのか。

ネットメディアなどで活動するフィリピン人記者、リウィ・メルカド氏は、「市長の中国人の父親、ジャン・チャン・グォ氏こそが中国共産党、人民解放軍と関係の深い人物で、スパイ活動をしていた疑いがある」と言っている。

ネット上でも、「市長は汚職まみれで、スパイにしては目立ちすぎ」との意見が多々ある。本件は3月の違法カジノ摘発から市長の関与が浮かび上がったもので、違法カジノや人身売買、ハッキング、マネーロンダリングを行なう犯罪組織の一角であった疑いが浮上。そこで判明したのが、市長の偽装された身元だ。

市長自身は「中国人の父親と、フィリピン人家政婦の母から非嫡出子として生まれ、農場で育てられたため正しい出生証明書がない」としたが、6月に捜査当局は、市長の指紋が別の中国人女性のものと一致したことを公表。この女性は03年に中国から入国、パスポートには「90年、福建省生まれ」になっていたという。そして、アリス・グォなる名前の別のフィリピン人がいたことも分かっている。

22年の市長選ではライバル候補にわずか468票差で勝って当選、犬猫の医療無償化プロジェクトを開始して支持を得ていたグォ市長が、今回の事態ですでに職務停止。

「彼女はバンバン市に18年間、住んでいたと主張していたのに、これも嘘で、実際には選挙の13カ月前に転居していたことが分かりました。彼女は、バンバンで普及するカパンパンガン語もきれいに話せません。主に疑問は4つ、彼女がいつから入れ替わったのか、本物のアリス・グォはどこにいるのか、どのぐらいの規模でこの偽装に関わっていた人がいるのか、そして、中国共産党の関与があるのか」

こう話すメルカド氏によると、グォ市長の当選時、祝辞を送っていた中国や香港の団体がいくつもあり、一部は「一族の誇り」というメッセージをフィリピンの中国語ローカル紙にも掲載。「とてもフィリピン生まれとは思えない後援ばかり」と言う。

「ただ、スパイ活動が濃いのは父親のほうで、フィリピンで中華系団体の顧問を務めながら、頻繁に中国へ渡航していました。多いときで月3度も中国に行き、現地で出たイベントには、中国共産党の有力役員や、スパイ養成機関のトップクラスが顔を並べていたことが写真資料などで明らかになっています」

なぜ、市長という目立ってしまう立場になったのか。後編記事『フィリピンの市長が中国のスパイ疑惑…日本も無視できない「犯罪組織」とのつながり』に続く。