「サムスンに負けた、アップルは終わった」…その1カ月後に起きた反転(2)

AI要約

アップルは独自のオンデバイスAIパラメータを増やし、クラウドAIを活用する戦略を展開している。

アップルのAI垂直系列化はセキュリティ面での強みを持ち、個人情報保護に注力している。

一方、サムスンは開放的な協業とハイブリッドAI戦略で差別化を図り、セキュリティ面では独自のプラットフォームを強化している。

ビジネスで「永遠の同盟」というものはない。チャットGPTはアップルに一種の踏み石にすぎない。アップルは独自のオンデバイスAIのパラメータを70億個まで増やすと発表したが、IT業界ではアップルの独自AIモデルが完成すればオープンAIとの同盟も終わるとみている。

◇隠れた武器「アップルクラウド」

アップルは可能なすべての機能をオンデバイスAIで処理したいが、莫大なデータが要求されるイメージ・映像生成は当分クラウドAIの力を借りて処理しなければならない。アップルが最近データセンターを増やしている背景だ。ここでアップルの長所が発揮される。

アップルはデータセンターに独自設計の半導体を搭載し始めた。iPadやMacBookに使われるアップルのMシリーズをベースに作ったチップがデータセンターサーバーにも使われる。クラウドAIを駆動するデータセンターのチップとオンデバイスAIを支援するモバイル機器チップすべてをアップルは自給自足しようとしている。

これはモバイル覇権戦略をアップルがAI時代にもそのまま再現するという意味にもみることができる。ハードウエアとソフトウエアの両方をアップルが独自に開発して駆動する閉鎖的垂直系列化方式だ。AI半導体設計とソフトウエア、基本ソフト(OS)、機器完成品とサービスまで「アップルのAI生態系」で一元化するという構想は、サムスンも、グーグルも、エヌビディアも、まねるのが難しい、世界でアップルだけが可能な戦略だ。

◇「問題はセキュリティだ!」

アップルの「AI垂直系列化」の強みはまだある。セキュリティだ。アップルがまだ出してもいないアップルインテリジェンスを紹介しながら最も強調した点も「セキュリティ」だった。

欧州連合(EU)はAI規制法を2年以内に全面施行すると予告した。今後個人情報保護やセキュリティに失敗したAIは各国政府の鉄槌を受けることになる可能性が大きい。

こうした状況でユーザーのデータをすべて内部で統制できるシステムはアップルの強みだ。アップルは独自のAI半導体が搭載されたデータセンターでユーザーのデータを処理するという。ここに個人AI処理のために設計されたクラウドインテリジェンスシステム(PCC)で釘を刺そうとする。アップルはPCCを通じてiPhoneやiPadなどユーザーの機器とサーバーの間で移動するデータを暗号化し、個人情報をサーバーに残さないと説明した。

◇サムスンの対応は

サムスンはグーグルなどと手を組む開放型協業で先にオンデバイスAI時代を開いた。1月に公開されたAIスマホのギャラクシーS24は「アンドロイドスマホが競合会社であるアップルより技術的優位を提供する」という外信の評価を受けた。アップルのAIが「オンデバイス・内在化」へと進む旅程ならば、サムスンは協力・機能・セキュリティで最初から「ハイブリッドAI」を指向する。

サムスンは「アンドロイド同盟」であるグーグルと協力してAIスマホを出した。自社の強みであるハードウエアに集中しながらも基本ソフト(OS)とアプリはグーグルの力を借りた。プロセッサ(AP)は細部モデルによりクアルコムのスナップドラゴン8とサムスンエクシノス2400をともに搭載した。AIモデルはサムスン独自のAIである「ガウス」とグーグルの「ジェミニ」を使う。好評を受けるAI機能のひとつである「かこって検索」もグーグルとともに開発したものだ。サムスンはオンデバイスとクラウドを混用する「ハイブリッドAI」を指向する。

個人情報セキュリティではオンデバイスAIの強みが明確だが、サムスンはこれを独自のセキュリティプラットフォーム「Knox(ノックス)」で強化した。サムスン電子関係者は「スマートフォンに別途の物理的空間を作りその中で重要なデータを処理する形で、万一の外部攻撃時にも重要なデータを持ち出せないようにセキュリティ城壁をしっかり築いたもの」と話した。