ある日突然「サービス遮断」、クラウドの落とし穴 解決に2カ月、AI自動審査が思わぬネックに?

AI要約

「クラウド活用」が当たり前となった現代、身近な人物がクラウドストレージサービスでアクシデントに遭遇し、解決に2カ月もの時間を要した事例を取り上げる。

教授が突然ファイルへのアクセスを遮断され、データへのアクセスができなくなった背景に潜むリスクとは何かを検証する。

このようなアクシデントは他のクラウド型サービスでも起こりうるため、一般の利用者も注意が必要である。

ある日突然「サービス遮断」、クラウドの落とし穴 解決に2カ月、AI自動審査が思わぬネックに?

 “クラウド活用”という言葉が、仕事術の1つとして注目されたのは昔の話だ。今や誰もが、まるで水道の蛇口をひねるようにクラウド上のサービスを情報の泉として活用している。

 しかし、あまりに当たり前であるがゆえにそのサービスに依存しすぎていると、思わぬ落とし穴にはまってしまう。とくにサービス運用にAIが積極活用されている近年、一度落とし穴にはまると、なかなか抜け出すことができない厄介な事態となりかねない。

 今回取り上げる事例は、身近な人物に起きた、身近なクラウドストレージサービスにおけるアクシデントだ。サービスを提供するプラットフォーマーの幹部に直接訴えたうえでも、解決までに実に2カ月もの時間を要した。

 細かくこのケースを追っていくと、問題の“根っこ”と言えるテーマがいくつか浮かび上がってきた。その背景にあるリスクはさまざまなクラウド型サービスに内在しているもので、同様のアクシデントはいつ誰にでも降りかかる可能性があるのだ。

■突然遮断されたファイルへのアクセス

 今年1月30日のこと。筆者は知人である大学教授から、助けを求めるメッセージを受け取った。教授はテクノロジ業界にも造詣が深い人物だ。

 教授は10年以上、仕事で扱うデータを複数のコンピュータから利用できるよう、アメリカ系のクラウドストレージサービスで管理してきた。ごく一般的なクラウドストレージのユースケースと言えるだろう。なお、この教授はクラウドサービスをあくまで個人的に利用していたのであって、大学のシステム部門とは直接関係ない。そのため大学名などを伏せることをご容赦いただきたい。

 ところが1月28日に突然このクラウドサービスが同期しなくなり、いっさいのデータにアクセスできなくなったという。授業に使う資料やプレゼンデータ、学生の提出物、蓄積していた重要な動画や写真などにもアクセスできなくなった。

 端末内に同期してあるローカルストレージのファイルにもアクセスできない。再ログインを試みてもパスワードを拒否され、「このアカウントは非アクティブとしてマークされています」と表示されるのみ。アカウント乗っ取りではないかと疑いつつ、パスワードの再設定を試すも、その要求も拒否された。