「反米枢軸」とはどの国々か? その危ういレッテルが意味するもの

AI要約

最近、「反米枢軸」と呼ばれる中国、ロシア、イラン、北朝鮮の関係について議論が広がっている。NATOが批判し、国際法に違反する行動を取る独裁国家として見られているが、連携して行動するほどの結びつきはない。

「反米枢軸」が独裁国家による国際法違反の共通点を持つものの、連携を形成しているわけではない。米国との対立関係だけで結びついており、批判と制裁を受けている。

「日独伊枢軸」や「悪の枢軸」と同様に、国際社会からマイナスイメージを持たれているが、単なる反米関係であるだけで連携関係ではない。

「反米枢軸」とはどの国々か? その危ういレッテルが意味するもの

ロシア、中国、イラン、北朝鮮の4ヵ国を「反米枢軸」と呼ぶ向きが最近あるようだ。だがこうした「枢軸」というレッテルは何を意味するのか? 元朝日新聞政治部長の薬師寺克行氏が解説する。

エマニュエル・マクロン仏大統領が数年前に「脳死状態にある」と酷評していたNATO(北大西洋条約機構)が、ウクライナ戦争を契機に求心力を強めている。

7月に米国ワシントンDCで開かれたばかりの首脳会議では、「われわれが直面する脅威は世界的かつ相互に関連している」として、関与すべき安全保障空間を、欧州のみならずアジア地域にまで拡大した。

さらに、NATO加盟国にとって最大の脅威であるロシアのほかに、中国、イラン、北朝鮮を挙げて、個別に批判を展開している。

日本の岸田文雄首相も、中国の軍事力強化や北朝鮮の核・ミサイル開発を念頭に、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と繰り返し発言している。

NATOが批判する中国、イラン、北朝鮮はいずれも、ウクライナ攻撃を続けるロシアに武器供与などの形で支援をしている。さらに、ロシアとともに現在の国際秩序を批判し、多極化した国際社会の実現を主張している。

米国批判で歩調を合わせているように見えるこの4ヵ国を、一部の識者らは「反米枢軸」と呼びはじめている。

「枢軸」という言葉ですぐに思い出すのは、第二次世界大戦で米英などの連合国側と戦って敗れた「日独伊枢軸」だろう。より最近では、イラク戦争を始めた米国のジョージ・W・ブッシュ大統領が、2002年1月の一般教書演説でイラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだ。

国際政治の世界でいう「枢軸」とは、親密な友好関係にあって共同行動をとる国々のことを指す。しかし、「日独伊枢軸」も「悪の枢軸」も、領土的野心を実現するために軍事力を行使する独裁国家といったマイナスイメージが強い。

「反米枢軸」と呼ばれる中国、ロシア、イラン、北朝鮮を見ると、いずれも民主主義国家ではなく、独裁国家あるいは権威主義国家だ。さらに、領土的野心などを実現するため、紛争を起こし、近隣諸国との関係は緊張している。こうした行動が国際法や国連決議に反することから、4ヵ国は西側諸国から批判され、さまざまな制裁を受けている。

ではこの4ヵ国は「枢軸」を形成しているのか。たしかに、米国との対立関係など共通点はある。だからといって、4ヵ国が連携して行動しているとはとても言えないのだ。