英で欧州政治共同体首脳会議 スターマー英首相、安保などテコに「欧州回帰」打ち出す

AI要約

欧州連合(EU)加盟国と英国など40カ国以上で構成される協力促進の枠組み「欧州政治共同体」(EPC)首脳会議が開催され、ウクライナ支援や安全保障などを通じた連携強化が話題となっている。

英首相スターマーは、EUとの関係再構築や新たな安全保障協定の締結を目指す方針を示し、英国の「欧州回帰」を強く打ち出している。

英国とフランスなど欧州諸国との安全保障協力が重要視されており、米大統領選による欧州への影響などを考慮し、核抑止力の強化やNATO加盟支援などが焦点となっている。

【ウッドストック(英南部)=黒瀬悦成】欧州連合(EU)加盟国と英国など近隣諸国40カ国以上で構成される協力促進の枠組み「欧州政治共同体」(EPC)首脳会議が18日、英南部オックスフォードシャー州ウッドストックのブレナム宮殿で開かれた。今月5日に就任したスターマー英首相は、欧州の安全保障やウクライナ支援などを通じてEUや他の欧州諸国との連携を一層深める方針を示し、英国の「欧州回帰」を強く打ち出す考えだ。

欧州政治共同体はロシアによるウクライナ侵略を受けて2022年に設立された。首脳会議は今回で4回目。昨年10月にスペインで開かれた前回会議に続いてウクライナのゼレンスキー大統領が出席し、支援継続を呼びかける。

スターマー政権は、今月17日の議会開会式でチャールズ国王が代読した施政方針の中で「欧州のパートナー諸国との関係をリセットし、EUとの貿易・投資関係を改善させる」と表明した。また、ロシアなどの脅威をにらんで英国とEUの新たな安全保障協定を締結する方針を強調した。

スターマー氏は9~11日に米ワシントンで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で国際外交のデビューを果たしたが、首相として広く欧州諸国の首脳らと直接会うのは今回の会議が初めてだ。

同氏は今回の会議について、英国の欧州離脱「ブレグジット」を促進した保守党の前政権下で冷却化した欧州との関係の修復を図る好機と位置づける。マクロン仏大統領ら欧州首脳との個別会談の場も設け、2国間関係の強化も図る。

スターマー氏は同時に、英国がNATOに引き続き強力に関与し、欧州の集団防衛を牽引していくと強調する見通しだ。

フランスと並ぶ欧州の核保有国である英国との安全保障協力の深化は、EUとしても優先的に進めたい政策分野の一つだ。欧州諸国の間では11月の米大統領選で仮にNATO懐疑派のトランプ前大統領が返り咲いた場合、「欧州から米国の核の傘が消え去りかねない」との懸念も根強い。

スターマー氏はこうした声を背景に従来の労働党の核軍縮路線を転換し、「核抑止力の確保」を国防戦略の軸に据える方針だ。

一方、ゼレンスキー氏に対しては、ウクライナのNATO加盟に向けた明確な道筋のために英国が主導的な役割を果たすと伝達する見通しだ。