習近平の思惑で、日本で「クスリを作れない」大惨事に…これから起こりうる「最悪の事態」

AI要約

日本の製薬会社は、ほとんどのクスリの原薬を中国から輸入しており、中国の依存度が高まっている。この状況が続くと、重要な医薬品の製造が困難になる可能性がある。

中国が日本に対して医薬品の原料の輸出を意図的にストップする事例は確認されていないが、最悪の事態を予期させるケースはすでに起こっている。

中国に頼り切った化学物質のサプライチェーンの脆弱性は、日本の医療制度に大きなリスクをもたらす可能性がある。

習近平の思惑で、日本で「クスリを作れない」大惨事に…これから起こりうる「最悪の事態」

普段からクスリを飲んでいる人は、作っているのがどこの製薬会社か確認してみてほしい。おそらくそのほとんどが日本、あるいは欧米のメーカーの製品だろう。一部の漢方薬を除いて、中国製のものを飲んでいる人はほとんどいないのではないだろうか。

前編記事『日本のクスリ、実はほぼ「中国製」だった…! 患者が知らない「ヤバすぎる実態」』で解説したように、日本の製薬会社は、クスリの原料となる有効成分の「原薬」の製造をほとんど海外に頼っている。厚生労働省も国内に原薬工場を作ったり備蓄を進めたりして、安定供給を目指しているが、リスクはそれだけにとどまらない。

慶應義塾大学名誉教授で、医療経済研究機構の副所長を務める印南一路氏が重ねて懸念しているのは、原薬の原料である化学物質のサプライチェーンの脆弱性だ。

「日本に輸出されている原薬にどこの原料が使われているのか厚労省が調べようとしたものの、海外メーカーにとって調達先は企業秘密であるため、完璧に特定するのは難しかった。しかし判明しているものに関しては、大部分が中国の企業が製造工程に関わった原薬だとわかったのです」

中国は安い労働力と緩い環境規制を背景にして、化学産業を大きく発展させてきた。安価な中国製の化学物質に頼り切った結果、日本はクスリの調達ルートの要衝を中国に握られてしまったのだ。このまま中国に原料調達を依存した状況が続けば、将来的に重要な医薬品を国内で製造できなくなる可能性も否定できない。

「政治的に気に入らない行動を取る国に対して、重要な物資の輸出入を規制するなど経済面で圧力をかけて思い通りに動かそうとするのは、中国の常套手段と言ってもいい。実際にこういったケースは、過去に何度も起こっています。

2010年には尖閣諸島の問題をめぐって、中国が日本へのレアアース輸出を規制したことを覚えている人は多いでしょう。最近でも2020年にオーストラリアとの関係が悪化し、豪州産ワインに対して200%以上の関税をかけています。

習近平国家主席も2020年4月の共産党財経委員会で、グローバルサプライチェーンの中国依存度を高めることで、相手国への抑止能力を形成すると明言している。

つまりこのまま中国依存が続けば、あちらの思惑ひとつで原料や原薬の価格が引き上げられたり、クスリの材料が日本に入ってこなくなったりする恐れがあるのです」(印南氏、以下「 」内は同)

これまで中国が日本に対して、医薬品の原料の輸出を意図的にストップした事例は確認されていない。しかし「最悪の事態」を予期させるようなケースは、すでに起こっている。

「2019年2月、感染症の予防に欠かせない抗菌注射薬『セファゾリン』の供給が停止され、予定通りに手術を実施できない病院が続出しました。

セファゾリンを製造している日医工などはイタリアのメーカーから原薬を輸入していましたが、そもそも主要原料であるテトラゾール酢酸を製造しているのは、世界でも中国のとある企業1社だけ。中国当局が環境規制を強化し原料の供給が止まったため、セファゾリンも製造できなくなったわけです。

将来的には外交カードとして、中国がこのような事態をわざと引き起こすことも考えられる。場合によっては、日本人の健康に直結する抗菌薬や抗生物質すら国内で製造できなくなるかもしれません」