米紙が報じる「多すぎる外国人観光客に対する“日本人の本音”」─「礼儀正しい日本社会の忍耐力が試されている」

AI要約

日本各地の観光地や以前は観光地ではなかった場所までもが外国人観光客で混雑し、地元住民の不満が高まっている。

観光客の多さによる様々な問題や地元環境の変化に対して、日本社会全体が忍耐力を必要としている。

外国人観光客の急増により、観光業の活況という一面と共に、地元住民や業種にとってのサステナビリティの課題が浮き彫りになっている。

米紙が報じる「多すぎる外国人観光客に対する“日本人の本音”」─「礼儀正しい日本社会の忍耐力が試されている」

多くの外国人観光客が押し寄せるなか、日本各地の観光地のみならず、以前はそうでなかった場所までもが彼らの振る舞いに悩まされている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、住民たちの複雑な心境を聞いた。

最近では2回、マツモト・ショウジの理髪店に、散髪を希望する外国人観光客が入ってきた。正面のドアは半分以上開けると大きな音で軋む、そんな店だ。

1人目はイタリア人、2人目は英国人だった。75歳で、どちらの言語も話さないマツモトは、どうコミュニケーションをとればいいのかわからなかった。彼はハサミを手にとり、散髪を始めた。長年の経験だけを頼りに、この気まずいめぐり合わせを切り抜けることができますように、と願いながら。

2022年に新型コロナウイルス関連の入国制限が撤廃されて以降、円安の後押しを受け、旅行者が日本に押し寄せている。岸田文雄首相をはじめとする政府関係者のなかには、オーバーツーリズムを懸念する声も出てきている。2024年3月には、1ヵ月間の入国者数が300万人を超え、2019年3月と比較すると10%以上の増加となった。

日本の古都・京都をはじめとする人気の観光地は、もう手に負えないと感じるようになってきている。富士山周辺の小さな町や、マツモトの理髪店がある京都の商業地区といった、以前は観光地ではなかった場所さえも旅行者であふれているのだ。

「以前は、観光客を見かけるのは特定の場所だけ、というが普通でした」とマツモトは言う。「でもいまはそんなこともなく、思いがけない場所にまで人々が押し寄せているんです」

普段は礼儀正しい日本社会も、この殺到ぶりには忍耐力を試されている。

京都をはじめとする観光客の多い都市に住む人たちのなかには、ホテルの宿泊料金の高騰や、バスやレストランの混雑ぶりに不満を持つ者もいる。また、旅行者が地元の習慣を無視することがあると言う者もいる。たとえば、芸者を追いかけて写真を撮ったり、日本では行儀が悪いとされる、歩きながらものを食べたりする行為のことだ。

5月のある日、バン・ヒロシ(65)が京都の平安神宮に行こうとしたところ、通常の倍の6時間かかった。彼はその原因の一つとして、バス料金の支払いのために小銭を数え、バスを待たせる観光客の存在を挙げる。

「ここでは毎日がカーニバルみたいです」と、イベントの主催などを手がけるバンは言う。「平和な日常生活を楽しむことができません」

観光収入の恩恵を直に被っている人たちでさえ、この状況がサステナブルではなさそうだと心配している。

京都でタクシードライバーをしているコバヤシ・ヒサシ(56)は、仕事がとても好調なので、一日休むと楽に稼げる金を逃した気になるほどだと話す。だが、観光関連の業種の多くは、パンデミックがもたらした労働力不足から回復しつつも、需要に追いつくために悪戦苦闘している、とのことだ。

「日本人がここに来たら、あまりにも外国人観光客が多いので、外国に来たかと思いますよ」。そう話すコバヤシのタクシーは、有名な寺付近の交通渋滞地点に近づいていた。「もうここは京都じゃありません」