地対空ミサイル「パトリオット」は崖っぷちウクライナ軍の"命綱"となるのか?

AI要約

ウクライナはロシアへの反撃を試み、ハルキウ北部で激しい戦闘が繰り広げられている。ウ軍は1.5トン爆弾による攻撃に直面し、露軍の攻勢に苦しむ状況だ。

ウ軍は滑空誘導爆弾の多大な威力により陣地が破壊され、露軍の突撃に対処しなければならない。人的資源で劣るウクライナは厳しい戦況にある。

バイデン大統領がパトリオット1基の追加供与を承認し、滑空誘導爆弾の防衛に一矢報いるチャンスが訪れた。

地対空ミサイル「パトリオット」は崖っぷちウクライナ軍の

ロシアへの反撃を試みるウクライナ。週プレNEWSでは6/6に配信した記事で、ウクライナ・ハルキウ北部での激しい戦闘を予測した(参照:崖っぷちのウクライナ軍が最後の"賭け戦"を開始!? ロシアへの攻撃が新たなフェーズに!)。すでにハルキウ戦線では、ロシア軍(以下、露軍)が多大な損害を出し、侵攻は失敗したと言われている。

その最前線にてウクライナ軍(以下、ウ軍)はいま、どんな戦いをしているのだろうか。元陸上自衛隊中央即応集団司令部幕僚長の二見龍氏(元陸将補)はこう話す。

「第二次世界大戦で米軍の空爆により"1トン爆弾"が落とされましたが、その際には地面に直径10mの穴が開き、通常の爆弾とは衝撃が全く違ったと祖母が話してくれたことを思い出します。さらに破壊力がある1.5トン滑空誘導爆弾であれば、15mの穴だけではなく、周囲への破片効果と衝撃波はすさまじいと推測できます。

1.5トン爆弾が直撃した場合、ウ軍の陣地構築物は大きく破壊され、コンクリートの巨大な破孔となり、退避壕に移動したウ軍歩兵たちは大きな損害を受けます。ウ軍は陣地同士の相互支援の連携、撃破地域への対戦車火器の指向が出来なくなり、その一帯の防御組織が崩壊するでしょう。

また、爆撃の衝撃でウ軍が動けなくなる時間が生まれます。当然、露軍はその機会を逃しません。ロシアの受刑者らで編成された『ストームZ』が突撃開始。装甲車上部に露兵を載せて前進します。

撃ち返しが常態となり従来型の砲兵部隊を横一線に並べて徹底的に砲弾を撃ち込むことが制約され、滑空誘導爆弾が威力を発揮します。滑空誘導爆弾の火力支援の下、ストームZは双方の火器の弾丸が飛び交う危険地帯へと前進して間合いを詰めます。そして、露軍歩兵主体に突っ込むか、そのまま露軍装甲車両の上に兵員を載せて、一気にウ軍の陣地へ突入してきます。

ウ軍はその攻撃に対して数回は持ちこたえますが、滑空誘導爆弾により兵員の損害が増え、露軍が数を頼りに押してくることを繰り返せば、ウ軍の陣地は少しずつ崩されていきます」

露軍が多大の犠牲を出す一方で、ウ軍も多くの犠牲者を出している。

この戦争では、人的資源で圧倒的に露軍が有利だ。長期戦を強いられる中で、ウ軍はひとりでも戦死傷者を防がなければ、各戦線の兵力を維持できない。そのためにはまず、1.5トン滑空誘導爆弾の爆撃を止めなくてはならないのだ。前出の記事中で、二見氏はこう言っていた。

【露軍はSu34戦闘爆撃機で、70km彼方から空飛ぶ滑空T34戦車を落としています。1.5トンのUMPK-1500滑空誘導爆弾で、ウ軍の防御陣地を攻撃している。その爆撃を大幅に低下させる必要があります。

しかし、それを撃墜可能な唯一の地対空ミサイルシステム『パトリオット』は、首都キーウなど中枢の防空が優先であり、前線での運用は数量的に難しい状態です】

しかし、6月11日の報道で、バイデン米大統領がパトリオット1基の追加供与を承認したとのことだった。これなら中枢防衛にすでに1基あるので、もう1基は最前線に出せる。ウ軍にチャンスが到来したのだ。

「露空軍による滑空誘導爆弾の投下が防げるかもしれません」(二見氏)