少子化問題は「お金」で解決できる? 専門家たちの見解は…(海外)

AI要約

2100年までに、世界の97%の国で出生率が人口置換水準を下回ると予想されている。

専門家は、出生率を上げるために金銭的なインセンティブだけでなく、男女平等の推進も重要だと指摘している。

現在の政策や取り組みでは、持続的な出生率の上昇には至っていない状況が続いている。

少子化問題は「お金」で解決できる? 専門家たちの見解は…(海外)

2100年までに、世界の97%の国で出生率が人口置換水準を下回ると予想されている。

人口統計学の専門家は、国が経済的なインセンティブを与えても、この問題は解決しないとBusiness Insiderに語った。

男女平等を推進することは"助け"になるかもしれないが、人口減少を反転させることはできないだろうと専門家は話している。

世界は少子化の危機に直面している。そして、これから子どもを持ちたいと考えている人々に経済的なインセンティブを与えても、問題の解決には至らないと専門家は警鐘を鳴らしている。

医学雑誌ランセットに掲載されたある研究は、2100年までに世界の97%以上の国で出生率が人口置換水準を下回ると予測している。

少子化を危惧する一部の国々は、人口減少を反転させようと、少子化対策に多額の投資を行ってきた。

東京都では出生率があまりに低いため、人々の婚活を後押しするマッチングアプリを開発した。

日本政府も育児休業を充実させたり、金銭的なインセンティブを提供することで、出生率を上げようと取り組んできた。

出生率が世界最低水準の韓国では、ソウル市が精管結さつ術(パイプカット)や卵管結さつ術を受けた人がそれを元に戻す手術をした場合、その費用を負担している。

その上、韓国の一部企業は従業員に子どもを産ませるために最大で7万5000ドル(約1200万円)を支給していて、子どもが1歳になるまで全ての親に毎月750ドルを支給する政府の手当もある。

ただ、出生率の問題に詳しいテキサスA&M大学のトレント・マクナマラ(Trent MacNamara)教授によると、少子化問題を"お金"で解決しようとしても、できることは限られているという。

「理論上は、従来の政策で出生率を上げることは可能だ」とマクナマラ教授はBusiness Insiderに語った。

「もし政府が子どもが生まれたばかりの親に子育てにかかる費用の5%程度を支給すれば、出生率は約5%上がると予想される」

しかし、このような政策には政府が負担することをためらうような「とんでもないコスト」がかかるとマクナマラ教授は指摘する。高齢化が社会福祉制度に与える負担を考えればなおさらだ。

マクナマラ教授は、何十億ドルと投資した韓国のような国でさえ、政策の効果についてはまだ結論が出ていないと話している。

各国政府が解決策を探しているものの、持続的な出生率の上昇につながる、手頃で実用的な政策という"聖杯"を誰もまだ見つけていないとマクナマラ教授は言う。

オックスフォード大学高齢化問題研究所の所長で、老年学を研究しているサラ・ハーパー(Sarah Harper)教授は、金銭的なインセンティブの長期的な効果は限定的だと話している。

「報奨金を手に入れようと、何年かにわたって分散するはずだった女性たちの出産が同じ時期に集中し、ミニ・ベビーブームが起きて、そのあとベビークラッシュが起こる」とハーパー教授はBusiness Insiderに語った。

"お金"で少子化問題を解決しようとするよりも、成功の最大のチャンスは男女平等を推進することだと同教授は話している。

「ポジティブな子育てを掲げ、母親も父親も職場で受け入れられて確実にキャリアを継続できるように」した国が出生率を維持できる可能性が高いという。

ただ、それでも人口置換水準を上回る水準に戻る可能性は低いとハーパー教授は語った。

メリーランド大学で家族人口学を研究しているフィリップ・N・コーエン(Philip N. Cohen)教授は、 少子化の危機を解決しようとするのは「無駄足」だと話している。

ほとんどの政策は失敗していて、しかも「近代人類史上、ここ数百年は少子化の歴史だ」とコーエン教授は指摘する。

シングルマザーのための社会福祉基金や、貧しい国からの大量移民など、異例かつ野心的な政策アイデアがいくつかあれば、理論上はインパクトを与えることができるかもしれないが、大半の国でこうした政策が実施される可能性は低いとコーエン教授は話している。

「それは政治的に問題をはらんでいる。たとえその計算が完璧に理にかなっていたとしても、だ」

コーエン教授は、全体的な傾向としては「これを好転させることはできないと思う」と語っている。