ソウル大学病院の無期限休診決定は「教え子愛」でなく「集団利己主義」[社説]

AI要約

ソウル大学病院の教授たちが、政府に対して専攻医に対する条件を提示し、全面休診を決定した。

教授たちが医師の基本倫理を裏切る恐れがある中、政府との交渉が行き詰まっている。

患者や医療従事者に大きな影響を及ぼす決定に対し、批判が高まっている。

 ソウル大学病院の教授たちが、17日からの無期限の全面休診を決めたという。政府に対して未復帰の専攻医にいかなる不利益も与えるなという条件を提示してだ。先に政府が、病院に復帰する専攻医は善処すると融和的な態度を示したにもかかわらず、むしろ一歩踏み込んだかたちだ。教え子たちを止めるべき教授たちが、教え子たちを前面に押し立てて医師集団の利己主義をあおっているようで、非常に残念だ。

 ソウル大学病院の教授たちは政府に、専攻医に対する行政処分を完全に取り消すよう求めている。集団行動に参加した専攻医が免許停止などの不利益を被る可能性を完全になくせというのだ。これを拒否すれば、17日から救急室や集中治療室などの必要不可欠な部署を除いて全面休診を強行するという。いくら政府の医学部増員政策が気に入らなくても、教授が医師の基本倫理を裏切る行動をためらわないと脅すというのは、果たして正しいことなのか。それでも教え子たちに「患者の健康と命を第一に考える」というヒポクラテスの誓いを教えられるのか。教授たちは政府に「医療事態の正常化に向けて合理的な措置を取れ」と要求している。だが、政府が業務開始などの行政命令を撤回するという出口戦略を提示したにもかかわらず、「医学部増員の白紙撤回」ばかりに固執し、かたくなな態度を取っているのは専攻医の方ではないか。

 ソウル大学病院は圏域責任医療機関であるため、全面休診を強行すれば、患者の被害は大きくならざるを得ない。またセブランス、サムスンソウル、ソウル峨山(アサン)などの他の大病院にも影響を及ぼすことになるため、医療の空白はさらに深刻化するだろう。ただでさえ専攻医の集団行動が100日以上続いており、患者と家族の不安はすでに臨界値に達している。患者諸団体がソウル大学病院の全面休診に対し、「医師集団の利益のために患者を投げ捨てた無責任な態度」だと激しい反応を示したのは当然だ。現場を守る医療陣の疲労も限界に達している。このような事情を知らないはずはないのに、インターネット上の医師コミュニティーでは「雇用の安定しているソウル大学もストライキをしているのに、開院医も医協投票くらいはやれ」、「よその病院の教授たちも共に立ち上がってほしい」など、医師たちの同調を求める投稿が見られるという。患者たちの苦しみを顧みない態度は実に嘆かわしい。医師集団のこのような姿は、国民の幻滅をさらに膨らませるだけだ。政府は医師の集団休診事態が発生しないように最善を尽くすべきだ。万一の事態への備えも徹底してほしい。

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