統一部「対北朝鮮ビラは表現の自由」…尹大統領「強くなってこそ北朝鮮が変わる」

AI要約

北朝鮮と韓国の対立が激化し、対北朝鮮ビラの再散布による緊張が高まる中、脱北者団体が20万枚のビラを北朝鮮に向けて飛ばす行動を取った。

韓国政府は表現の自由を尊重し、対北朝鮮ビラ散布を制止しない方針を確認しているが、南北の対立は深刻化している。

韓国大統領は北朝鮮の挑発行為に対し、圧倒的に対応する姿勢を示し、統一大韓民国の実現を強調したが、その表現に波紋が広がっている。

 北朝鮮が対北朝鮮ビラの再散布に「百倍の汚物」で対応すると警告してから4日後の6日、脱北者団体がビラ20万枚などを北朝鮮に向かって飛ばし、南北の厳しい対峙状況にさらに追い打ちをかけた。統一部は「表現の自由の保障」を掲げ、対北朝鮮ビラ散布について取り締まりや制止をしない方針を繰り返し確認した。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は顕忠日(殉国烈士・戦没者追悼記念日)の追悼式典での演説で、「休戦ラインの北側は世界で最も暗い暗黒の地」だとしたうえで、「統一大韓民国」のために「力」で北朝鮮を変化させると述べた。南と北の軍事的衝突の危険性がさらに高まったという懸念の声があがっている。

 脱北者団体の「自由北韓運動連合」のパク・サンハク代表は「京畿道抱川(ポチョン)で、6日午前0~1時の間にバルーン(大型風船)10個を使い、金正恩(キム・ジョンウン)の妄言を糾弾する対北朝鮮ビラ20万枚を散布した」と発表した。大型風船には歌謡やドラマなどを保存したUSB(移動式保存装置)5000本と米国1ドル紙幣2000枚も入れたと説明した。パク代表は、ビラ散布の過程で警察の制止などはなかったとし、「金正恩が謝罪しない限り、北朝鮮へのビラ散布を続ける」と語った。

 韓国軍の消息筋は「脱北者団体が飛ばした風船の一部は北朝鮮上空に飛んでいった」と話した。これに先立ち、今月2日に発表された北朝鮮のキム・ガンイル国防次官の談話は、「韓国の輩が反共和国ビラ散布を再開した場合、発見される量と件数に応じて、100倍の紙くずと汚物を再び集中散布する」と警告した。

 統一部は「ビラ散布問題については、表現の自由の保障という憲法裁判所の決定(2023年9月)の趣旨を考慮してアプローチしている」とし、「状況管理のために最善を尽くしている」と述べた。しかし、統一部当局者は「(対北朝鮮ビラ散布に)自制は要請しない」という政府方針を繰り返し確認した。パク代表は5月10日にも対北朝鮮ビラ30万枚などを北朝鮮側に飛ばしており、南北は「対北朝鮮ビラと汚物風船」事態の責任の所在をめぐり激しい対立を続けてきた。

 尹錫悦大統領は同日、国立ソウル顕忠院で開かれた第69回顕忠日追悼式典で、「北朝鮮政権は西海(ソヘ)上の砲射撃とミサイル発射に続き、最近は正常な国なら恥ずべき卑劣な方式の挑発まで敢行した」とし、「北朝鮮の威嚇を決して座視しない。断固として圧倒的に挑発に対応していく」と述べた。また「大韓民国は世界で最も明るい国」だが「休戦ラインの北側は世界で最も暗い暗黒の地」だと語った。さらに、「平和は屈従ではなく、力で守るものだ。われわれの力がさらに強くなってこそ、北朝鮮を変化させることができる」とし、「統一大韓民国もわれわれが強くなってこそ可能なことだ」と主張した。尹大統領の「統一大韓民国」という表現は、政府が否定する「吸収統一」を思わせる可能性があり、波紋が予想される。

イ・ジェフン、イ・スンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )