大の里、史上最速V王手、敗れれば最大4人による優勝決定トーナメントも

AI要約

新小結・大の里が初優勝に王手をかけ、単独首位を堅持。関脇・阿炎に勝てば史上最速での初優勝が決まる可能性がある。

大の里は、攻めの姿勢を貫き、自身の初優勝への夢が膨らんでいる。勝利により単独首位となり、幕下10枚目格付け出しでの最速初優勝に期待がかかる。

師匠や関係者からのサポートもあり、大の里は冷静な姿勢を崩さず、千秋楽へ向け集中している。

大の里、史上最速V王手、敗れれば最大4人による優勝決定トーナメントも

◆大相撲 ▽夏場所14日目(25日、東京・両国国技館)

 新小結・大の里(23)=二所ノ関=が、初優勝に王手をかけた。東前頭10枚目・湘南乃海(26)=高田川=を押し出して、3敗で単独首位を堅持。千秋楽で関脇・阿炎(30)=錣山=に勝てば、幕下10枚目格付け出しでの初土俵から7場所目となる、史上最速での初優勝が決まる。大の里が敗れれば、最大4人による優勝決定戦の可能性があり、そうなれば1997年春場所(貴乃花=優勝、曙、武蔵丸、魁皇)以来となる。

 初賜杯への夢が一気に膨らんだ。今場所を象徴するかのような大の里の攻めだった。立ち合いで194センチ、190キロの湘南乃海の当たりをしっかり受け止めると、右を差した。「迷いはなかった。イメージ通り」。左をおっつけて前へ。土俵際で最後は右腕を振り切るようにして、3秒7で押し出した。初めてまげを結って臨んでいる23歳は支度部屋では目を閉じ、落ち着いた口調で振り返った。

 結びで同じく3敗だった琴桜が敗れ、千秋楽を前に単独首位となった。初土俵から所要7場所で初優勝なら、新入幕として110年ぶりに先場所を制した尊富士(10場所)を超える最速V。大銀杏(おおいちょう)も結えないスピード出世を示す同じちょんまげ頭での躍進も重なる。幕下付け出しとしても、同郷・石川出身の輪島(元横綱)の同15場所を大きく更新する。自力で決められる優位な立場となった。それでも慢心はない。「優勝はないものだと思っている。首位で千秋楽を迎えることについても気にしていない」と泰然自若を貫く。今年初、春場所で終盤にV争いから失速した経験から、冷静さを崩さなかった。

 新三役として周囲からマークされる中、新入幕から3場所連続で11勝目。師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)はこの日の朝稽古後、「初日に横綱・照ノ富士を撃破した経験が今場所(良い方向に)出ている。土俵での経験は稽古場の1万倍の価値がある」と弟子の背中を押した。八角理事長(元横綱・北勝海)も「相手が大きいからやりやすかった。圧勝が多いのは大関、横綱への近道」とたたえた。

 千秋楽は、14日目の結びで琴桜を破った阿炎戦。初顔合わせだった先場所は勝っており、幕内後半戦の九重審判長(元大関・千代大海)は「大の里が有利。勝った相撲に修正するところがない」とうなった。周囲の期待の大きさの一方で、大の里は「明日最後の一番を取り切って、来場所につなげるだけ」と淡々と締めた。無欲のまま、15日間を戦い抜く。(山田 豊)

 ◆大の里最速Vメモ 昨年夏場所の幕下10枚目格付け出しでの初土俵から7場所目での優勝となる。付け出しでの現在の最速記録は輪島で、幕下60枚目格で初土俵を踏んでから15場所目。付け出しを除く最速は先場所の尊富士の10場所目。同じ条件ではないが、大の里が賜杯を手にすれば、いずれも抜いて最速記録となる。