偉大なる師匠の背中を見て、追って、女王候補は絶賛進化中！松尾彩…伊勢崎オートＧ１ムーンライトＣＣ

◆第３１回ムーンライトチャンピオンカップ（Ｇ１ナイター、６日・３日目、伊勢崎オートレース場）

　２０１９年に３４期生としてデビューした時、彼女は力強くこう宣言した。

　「いつか、必ず師匠を超えて、チャンピオンになります！」と。

　あれから、７年。

　松尾彩は確実に大きな進歩と発展を遂げ、師匠である佐々木啓のプロフェッショナルな領域へと一歩、また一歩と近づいている。

　今シリーズも快速を発揮しまくっている。初日にいきなり勝利を挙げると、２日目はレース中止となったが、３日目５Ｒも強烈なるまくり芸を繰り出して、豪快にアウトコースをぶん回ってまたも勝利をその手に収めた。

　「初日は後ろを離せましたが、今回はいっぱい、いっぱいでした。でも、タイヤがいいので伸びてくれますね！」

　華奢でスリム過ぎる松尾の立ち姿を見ただけで、オートレーサーとしての資質を圧倒的に感じる。

　「はい、この体形はすごく有利だと思います！　特に体に合わせてエンジンを作っているわけじゃないんですが、やっぱり直線の伸びは自分の強みだと思います」

　４５キロに満たないミニマムボディは、強烈なストレート速度をもたらす。

　松尾に屈した選手の多くは「とにかくバックの伸びで離されてしまう」と嘆き節をあげている。

　デビュー当時から彼女に助言を与える丸山智史も「松尾は何と言っても体重が軽いですからね。最近はなんだろう、乗り手の技術も少しずつ上がっていると思いますし、何よりもうまくなろう、強くなろうと、すごく真剣に取り組んでいますからね。自分がアドバイスをするのは車の付け位置なんですが、そこがもっと上手になれば、さらにいい選手になっていくんじゃないですかね！」

　そして、松尾には最高の“攻略本”がついている。

　そう、師匠である。

　オート界で最もクリーンに競走する選手として名高い佐々木の薫陶を浴し続けて、松尾は成長を重ねてきた。

　「佐々木さんに教えていただいて、本当に自分は恵まれていますよね！　佐々木さんは全部がうまい選手で、できないことが何もないレーサーなので、なんていうんですかね、あっ、“攻略本”みたいな存在です！　私にとって佐々木さんはオートレースの攻略本みたいな方なんです」

　乗る技術もエンジンを作る英知もオートレースに必要な何もかもを備える師匠から、日々、マンツーマンで指導を仰ぐことができる環境は、松尾にとって大きな武器となり、財産となっている。

　選手生活を開始した当初の「師匠を超えます」という命題は、７年の時が過ぎて、松尾の展望にどう変化があったかを聞いてみた。

　「そうですね、７年やってみて、その目標に少しは近づけているようには感じています。まだまだな部分はあるんですが、少しずつ近づけている手応えは出てきました。今後はまずは最重ハンデに定着したいです！　オートレースの仕事は楽しい？　はい！　すごくやりがいがありますね！」

　セミファイナルが行われる７日は、彼女にとって３６度目のバースデーとなる。

　「もう、いい年ですよね（超苦笑いしながら）。だんだん年を取ってきて、やっぱり疲れは感じるようになりました」

　そう彼女は言うが、レーサーとして、人間として、いよいよ、これからあぶらの乗り切った最盛期に突入していく。

　これからも師匠からの教えを血とし、肉とし、小柄な次期クイーンは、驚がくの直線加速と同じレベルで、出世ロードを突き進んでいく。松尾さん、ハッピーバースデー。

　見た目はなんというか高校生の部活女子みたいです。

　ぜひ今度は若さの秘けつを教えてください。

（淡路　哲雄）