競泳日本“五輪惨敗”のウラ側で「ある異変」…スタンフォード、UCバークレー、パリ代表・平井瑞希もテネシー大へ 有力選手が続々海外大進学のナゼ

AI要約

競泳界で若手選手が海外大学へ進学する新しいトレンドが始まっている。

これまで日本のトップ選手が国内大学を経てからアメリカに留学していた例が多かったが、最近は高校生のうちから直接海外の大学へ進学する選手が増えてきている。

過去にも海外留学を経験した選手は存在するが、最近の選手たちは競技力向上だけでなく、他の理由から海外留学を選択しているようだ。

日本の大学では日本の選考会と競合するため、競技力向上を目指す選手にとって効率的ではないが、それでも彼らが海外の大学を選ぶ理由がある。

競泳日本“五輪惨敗”のウラ側で「ある異変」…スタンフォード、UCバークレー、パリ代表・平井瑞希もテネシー大へ 有力選手が続々海外大進学のナゼ

 熱戦続いたパリ五輪。海外大会では史上最多のメダル獲得数を記録するなど、日本勢の活躍に連日、大いに盛り上がった。一方で、予想以上に苦戦を強いられた種目もある。競泳はその代表格だろう。メダル獲得は男子400m個人メドレーで松下知之が獲得した銀1個にとどまり、自己ベスト更新もその松下だけだった。そんな日本競泳界である「新潮流」が起こりはじめている。10代の有力選手が続々と海外大への進学を決めたのだ。そのウラで、一体何が起こっているのだろうか。《全2回の1回目/つづきを読む》

 パリ五輪の女子100mバタフライで7位入賞を果たした平井瑞希(日大藤沢高)が、アメリカ・テネシー大学への進学を公表。高校生で日本代表になった選手が、日本の大学を経ずに海外の大学に進学するのは異例のことであった。

 実は今年、すでに海外留学を決めたトップ選手はほかにもいる。

 ジュニアの日本代表として活躍してきた岡留大和(東邦高)はUCバークレー大に進学。さらに全国大会で活躍していた平泳ぎの長岡豪(栄東高)はスタンフォード大学に進学するなど、国内トップクラスで活躍してきた選手たちの進路に、海外の大学という新たな道筋がハッキリと表れ始めている。

 過去にも現役時代に海外留学をしたトップ選手はいる。近いところでいえば、元五輪代表の井本直歩子氏や、元世界水泳選手権代表の今井亮介氏らだ。

 ただし、彼らは日本の大学に進学後にアメリカの大学に留学という形で海を渡っている。もちろん現役として活動中だったので、留学先でも大学生として学びながら選手として水泳でも活躍し続けてきた。

 また、ここしばらくは海外の大学へ留学する選手はほとんどいなかった。

 全くいなかったわけではないのだが、そのほとんどは外国籍を有する選手たちが、国籍選択時に海外の国籍を選ぶと同時に海外の大学へ進学するという流れであった。

 では、平井をはじめとする選手たちは、なぜ海外の大学を選んだのだろうか? 

 大前提としてハッキリと言えるのは、決して国内の水泳界のシステムやサポート、指導がダメだから海外に出る……というワケではない。なぜなら、競技力の向上だけを考えて留学するワケではないからだ。

 もし平井たちが競技力向上だけを目的とするならば、海外の大学――特にアメリカの大学への進学という選択肢にメリットはほとんどない。というのは、NCAA(全米大学体育協会)に所属する大学では、日本で言うところの日本学生選手権(インカレ)が3月にヤードプールで行われるからだ。

 日本の選手が日本の選考会で結果を残すことを考えるなら、3月に、しかもヤードプールでメイン大会を迎えるアメリカの大学に進学する意味は見出しにくい。

 五輪や世界選手権に向けて、ただでさえ高水準の派遣標準記録を切らなければならない選考会が同時期に行われる以上、日本の大会スケジュールに合わせて強化ができる日本の大学を選んだほうがよほど効率的なのは、火を見るよりも明らかだろう。

 ではなぜ彼らはそれでも日本を飛び出し、アメリカの大学への進学という選択肢を選んだのだろうか? 

<次回へつづく>