【甲子園】通算64本塁打の早実・宇野真仁朗、家族の絆の3安打3打点「兄の悔しさ俺が晴らす」

AI要約

早実の主砲である宇野真仁朗内野手が甲子園デビュー戦で3安打3打点を記録し、チームに勝利をもたらした。

家族の絆が導いた甲子園出場で、兄の思いを胸に勝利を掴んだ宇野真仁朗。

早実が久々の甲子園勝利を収め、過去の栄光や対戦結果から歴史的な勝利を振り返る。

【甲子園】通算64本塁打の早実・宇野真仁朗、家族の絆の3安打3打点「兄の悔しさ俺が晴らす」

<全国高校野球選手権:早実8-4鳴門渦潮>◇11日◇1回戦◇甲子園

 早実(西東京)の主砲に、甲子園がほほ笑んだ。高校通算64本塁打のプロ注目スラッガー宇野真仁朗内野手(3年)が、5打数3安打3打点で聖地デビュー戦を飾った。鳴門渦潮(徳島)との1回戦に「2番遊撃手」で先発出場。0-2の2回2死満塁、走者を一掃する左翼フェンス直撃の逆転適時二塁打を放って流れを引き寄せた。2回戦は第9日の第3試合で鶴岡東(山形)と対戦する。

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 聖地デビュー戦で、早実の宇野が走攻守で輝きを放った。初打席で二塁打。0-2で迎えた2回2死満塁の第2打席ではフルカウントからの10球目、125キロのスライダーをフルスイング。打球は左翼フェンスを直撃し、3人の走者を生還させた。「変化球をうまく前のポイントで捉えられた。完璧ではなくて、少し泳いだと思ったんですが。飛んでくれました」。昨秋の大会後から振り込んできた85センチ、880グラムの木製バットで3安打3打点と結果を出したが「練習の成果が出ただけ」と謙遜した。

 3回には強烈かつ難しいワンバウンドの打球をそつなく処理。相手の隙(すき)をつく走塁に、堅実な遊撃の守備。「走塁も守備もできるのが自分の強み。それを甲子園の初戦でできたのは良かったです」と笑顔で汗をぬぐった。

 家族の絆が導いてきた甲子園だった。OBで早大野球部で学生コーチの兄竜一朗さん(4年)には忘れられない思い出がある。20年、コロナ禍で夏の甲子園が中止に。目標を失い、気持ちのやり場を失った竜一朗さんに、父誠一さん(56)からの電話が鳴った。

 誠一さん 真仁朗が話したいって。

 竜一朗さん 真仁朗に俺の気持ちなんてわからないだろ!

 吐き捨てるように言った言葉に、家族の電話は沈黙に包まれた。竜一朗さんは「心無い言葉で弟を傷つけた。なんであんなひどいことを言ってしまったんだろう…と本当に後悔しました」と回想した。

 だが、兄の思いは真仁朗の心に届いていた。「お兄ちゃんの悔しさを俺が晴らす」。同じ早実に入学して努力を重ね、兄が目指した甲子園の舞台に立った。

 市川シニア(千葉)の監督を務める誠一さんは、小さい頃から「土と一緒になってユニホームを汚したら落ち着くぞ」と教えてきた。初戦を終えた真仁朗のユニホームは真っ黒。家族の夢・甲子園の土で真っ黒のユニホームが、真仁朗にとって1つめの勲章になった。【保坂淑子】

 ▽ヤクルト小川GM 力強いし、バットの出方もいい。能力は高いです。ボールなら振りに行かないスタイルも試合への意識の強さを感じます。(プロ志望届を出せば)かかるんじゃないですか?

 ◆早実の甲子園勝利 清宮幸太郎(現日本ハム)が3年だった17年春の明徳義塾戦(5-4)以来。夏の勝利は清宮が1年で4強入りした15年以来9年ぶり。

 ◆徳島勢に雪辱 早実が甲子園で徳島県勢と対戦するのは2度目。前回は82年夏の準々決勝で池田に2-14で大敗。荒木大輔、石井丈裕の両投手が池田の「やまびこ打線」に対し、水野雄仁の2打席連続アーチなど全員、毎回の計20安打を許した。

 ◆第1回出場校 早実は甲子園球場誕生(1924年)より前に、1915年の第1回大会から出場する伝統校。豊中球場で行われた第1回大会に出場した10校のうち、令和に出場したのは早実が初めて。

 ◆4元号勝利 2017年(平29)春以来の甲子園出場となった早実が、大正、昭和、平成に次いで令和でも勝利。4元号勝利は松商学園、高松商、広陵、広島商、北海、慶応に次いで7校目。

 ○…三塁側アルプス席は早実の生徒、OB、ファンら約2800人の大応援団で埋め尽くされた。06年夏甲子園Vメンバーの後藤貴司さん、檜垣皓次朗さん、白川英聖さんもかけつけた。当時主将の後藤さんは「当時を思い出しますね。9回2死で駒大苫小牧の田中(将大、現楽天)を三振に打ち取った瞬間のドキドキ感、大歓声。懐かしいですね。後輩たちにも頑張って欲しい」とエールを送った。