石川祐希が“最高の仲間”と本気で挑んだ金メダル「バレーボールをさらに極めます」叶わなかった…それでも3年間で“世界との距離”は縮まった

AI要約

2024年パリ五輪での男子バレーボール決勝戦に挑む日本代表チームとキャプテン石川祐希の姿。悔しさを忘れず次に進もうとする姿勢やメダルを目指す意気込みが描かれる。

チームは初戦でドイツに逆転負けし、予選突破が危ぶまれる状況に。しかし、石川は「立て直す」と意気込みを示し、アルゼンチン戦で初勝利を収める。

石川は調子の上がらないスパイクに苦しむ中、チームを引っ張る姿勢を貫き、健闘するものの苦悩は続いている。

石川祐希が“最高の仲間”と本気で挑んだ金メダル「バレーボールをさらに極めます」叶わなかった…それでも3年間で“世界との距離”は縮まった

 世界ランク1位と2位の顔合わせとなった、パリ五輪男子バレーボール決勝戦。

 この舞台を目指してきた日本代表の選手たちは、そして石川祐希は、この試合をどんな思いで眺めていたのだろうか――。

 ベスト8に終わった2021年東京五輪。準々決勝のブラジル戦に敗れた後、キャプテンの石川は仲間を集め、「この悔しさを忘れず次につなげるしかない。次また進んで行こう」と気丈に声をかけ、前を向いた。ただ、ベンチに戻ると悔しさで涙が溢れた。

 あれから3年。チームは経験を重ねる度に逞しさを増し、世界の強豪とも台頭に戦えるチームへと成長した。

 そして迎えたパリ五輪。

 コーチ時代を含めると日本代表で8年目のシーズンとなるフィリップ・ブラン監督ともこれが一緒に戦う最後の大会となる。集大成と位置付けたこの五輪は本気で金メダルをターゲットにして、挑んできた。

 だが、メダルという高い壁は越えることができなかった。

 金メダルという目標は掲げていたが、石川は「メダルのチャンスはあるけれど、簡単ではないし、必ず勝てるという保証もない。地に足をつけないと足元をすくわれる」とどんなときも冷静さを失わず、自分たちを俯瞰してみることも忘れなかった。

 開会式翌日にはギョルギ・グロゼルを擁するドイツと対戦。初戦の緊張からか硬さがが目立った。日本は要所でミスが出てしまい、2-3と逆転負け。黒星からのスタートとなった。

 この敗戦で予選突破を諦めている選手は誰一人としていなかったが、「切り替える」という言葉を発しながらも、やはりどこかショックを受けている様子だった。

 ただ、それでも試合は続いていく。4日後のアルゼンチン戦は絶対に負けられない。自らにも言い聞かせるようにミックスゾーンで石川は力強くこう言い切った。

「もちろん立て直します。ここから上がっていくしかないと思っているし、これで終わるようなメンバーではないので。いいパフォーマンスを見せられるよう、自分たちのために戦っていきます」

 アルゼンチン戦は3-1で勝って今大会初白星。石川もブロック時に手をグーにする頭脳的なプレーを見せるなど多彩な攻撃で相手を翻弄した。

 ただ、見ていて気になったのは石川の調子だ。スパイクの状態が上がらず、どこか歯がゆさを感じているようだった。そこに笑顔はなく、険しい表情だった。

「自分もやっていて、なかなか感覚というか……(調子が)上がっていないというか。体の切れも、すごく疲れているのかなと考えたりして」

 それでもチームを牽引するキャプテンとして、エースとしてプレーし続けなければならない。違和感を覚えながらも、「どんな状況においても。自らのパフォーマンスを高く維持できるよう」に努める姿が印象的だった。

 だが苦悩は予選ラウンド最終戦のアメリカ戦でも続く。