「ここに戻る」金足農・吉田大輝、兄の背中を追って 夏の甲子園

AI要約

金足農の2年生エース・吉田大輝投手が、兄の背中を追いかけるも、試合で敗れる。

兄の活躍をスタンドで見届けた吉田大輝投手は、試合で4失点を喫して自身の不甲斐なさを痛感する。

しかし、試合終盤にはチームが全力で応援し、再び甲子園に戻ってくる決意を固める。

「ここに戻る」金足農・吉田大輝、兄の背中を追って 夏の甲子園

 ◇高校野球・夏の甲子園1回戦(9日)

 ◇○西日本短大付(福岡)6―4金足農(秋田)●

 くっきり二重に、口元から白いマウスピースがこぼれる。負けん気の強そうな表情も兄そっくりだ。6年前の夏に「旋風」を巻き起こした兄の背中を追い、金足農の2年生エース・吉田大輝投手が同じマウンドに立った。

 ワインドアップから投じる自慢の直球は最速タイの146キロを計測。状態は悪くなかった。しかし「(相手が)真っすぐ張りかと思ったが、変化球張りだった。そこに対応できなかった」。五回は制球が乱れてピンチを招き、甘く入った変化球を捉えられ、4失点を喫した。

 6年前の熱狂をスタンドで、肌で感じた。第100回大会で金足農は横浜や日大三といった強豪校を次々に破り、秋田勢として103年ぶりに決勝に進出。「金農旋風」と言われた。その中心にいたのがエースの輝星投手(オリックス)。「(甲子園で)輝星は楽しんでいるように見えた。暑さもある中でずっと連投とかしていたのですごいなと思った」とほぼ1人で投げきった兄を目に焼き付けた。自身は七回まで154球で降板。「甲子園の全国レベルの難しさを思い知らされた試合になりました」。マウンドを譲ったことが何より悔しかった。

 九回の攻撃では6点差から打線がつなぎ、4得点した。球場全体から攻撃を後押しする歓声を聞き「ここまで応援されているとは思っていなかったのでうれしかった」とダッグアウトで涙があふれた。「絶対来年パワーアップしてここに戻ってくる」と土は持ち帰らず。最後はあの負けん気の強い表情に戻っていた。【生野貴紀】