【準々決勝進出】なでしこがアメリカに勝つために必要なこと(1) 世界No.1フィジカルを下した「スピード」と初出場の北川ひかる「25メートル FK」

AI要約

なでしこジャパンはナイジェリアに3-1で勝利し、グループステージを2位で通過した。試合では光と陰が明確になった。

立ち上がりの20秒で守屋都弥が負傷し、フィジカル差が問題となったが、プレースピードを活かして対応し、的確なポジション取りで勝利につなげた。

ウイングバックの活躍や美しい2点が印象的であったが、後半にプレースピードが落ち失点を招いた。しかし、北川ひかるのFKで再び2点差を広げ、3-1で試合を終了した。

【準々決勝進出】なでしこがアメリカに勝つために必要なこと(1) 世界No.1フィジカルを下した「スピード」と初出場の北川ひかる「25メートル FK」

 ナイジェリアに3-1で勝ち、グループを2位で突破したなでしこジャパン。だが「光と陰」が明確になった試合でもあった。

 立ち上がり20秒でいきなり右ウイングバックの守屋都弥(みやび)がぶちぎられ、ピンチを招いたなでしこジャパン。フィジカルだけなら世界ナンバーワンと言っても過言ではないナイジェリアを相手にどう戦うのかが注目だったが、こうした状況が繰り返されたら、本当に厳しい試合になっただろう。

 そうならずに済んだ最大の理由、それは「プレースピード」だった。なでしこジャパンは次第にフィジカルの差にアジャストし、的確なポジションを取ることでパスのテンポが上がり、ナイジェリアのフィジカルにさらされずに前進できるようになる。

 両ウイングバックが生きた。大会前の負傷でこれまでベンチ外だった北川ひかるが左ウイングバックで初出場し、タイミングの良い上がりと左FW植木理子とのコンビで左からチャンスをつくった。右ウイングバックの守屋も、果敢な上がりで先手をとっていく。

 そのリズムの中で美しい2点が生まれる。

 先制点は前半22分。熊谷紗希からパスを受けてターンした長谷川唯がスペースを使ってもちあがる。左タッチライン沿いに北川が上がり、その内側を植木がゴールに向かって動き出すと、ナイジェリアの守備はぼやけ、植木がフリーになる。そこに長谷川のスルーパス。ペナルティーエリア左に抜け出した植木が冷静に中央にボールを送ると、走り込んできた浜野まいかがゴールに押し込んだ。

 さらに10分後、今度は右サイドだ。

 自陣の高橋はなから鋭い縦パス。受けた田中美南がフリック(味方選手からのパスに軽く触り、軌道を微妙にずらしてパスをつなげる技術)で右奥のスペースに流すと、そこには疲れ知らずの守屋が走り込んでいた。追いついてきれいなクロス。左から中央に走り込んできた植木のヘッドはバーを叩いたが、跳ね返ってきたところを田中が押し込んで2-0としたのだ。

 だが、この後、日本の「プレースピード」が目に見えて落ちる。原因はよくわからない。ただ全体にポジションがあいまいになり、パスコースが減り、ひとりの選手のボール保持時間が微妙に長くなった。そのリズムのないプレーの中で失点が生まれる。

 自陣深く、右サイドのスローイン。守屋はゴールライン近くの高橋に渡したが、そこからパスの出しどころがなく、高橋はペナルティーエリア左のDF石川璃音にピッチを横切るパス。石川はワンタッチで中盤につなごうとしたが、それが相手に渡ってしまう。そして日本のペナルティーエリア手前でリズミカルにパスを回され、最後はジェニファー・エチェギニに強烈なシュートを叩き込まれたのだ。

 なでしこジャパンは前半のアディショナルタイムに北川ひかるが25メートルから見事なFKを決めて再び2点差とし、最終的に3-1のスコアのままで試合を終わらせたが、前半の5分ごろから2点目が入るまで見せていた「プレースピード」は、ついに再現されなかった。