マチナカ開会式はハコモノ五輪からの脱却、95%が既存会場はサステナブル五輪への変換となるか

AI要約

パリ五輪の開会式はセーヌ川を舞台に美しい景観と豪華なエンターテインメントで壮観に繰り広げられた。

過去の五輪開会式を凌ぐ派手さと新たな取り組みが注目され、持続可能な大会への舵取りが進む。

財政負担の最小化や世界的なメッセージを含む大会はIOCの理念の浸透が重要であり、黒字化も期待される。

マチナカ開会式はハコモノ五輪からの脱却、95%が既存会場はサステナブル五輪への変換となるか

<五輪日和>

 壮観なパーティーだった。セーヌ川を舞台に繰り広げられたパリ五輪の開会式は、33回目にして初めてスタジアムの外に飛び出して「マチナカ」で行われた。

 パリを代表するエッフェル塔、凱旋(がいせん)門、ルーブル美術館など歴史的建造物をフル活用。美しい景観に水(思いがけぬ雨も…)と光のファンタージを織り交ぜた演出に加え、「フランス」にこだわらずセリーヌ・ディオン(カナダ)、レディー・ガガ(米国)らが出演する豪華エンターテインメントで魅了した。

 選手団は陸路でなく水上パレード。聖火ランナーには母国の英雄ジダン、ナダル、リネールにとどまらず、カール・ルイス(米国)、ナディア・コマネチ(ルーマニア)らまで登場した。最後の聖火台は点火とともに気球になって空に舞い上がるなど、いろんな意味で従来の五輪の枠を大きく飛び越えた内容となった。

 派手さは過去の開会式よりも上回った。従来のハコモノ五輪から脱却し、持続可能なレガシーへと舵を切る大会になる。これまで五輪開催となれば、巨額の建設費を投じてスタジアムを新設したものの、その後は廃虚となる「負のレガシー」が問題となってきた。

 例えば、08年北京のメイン会場「鳥の巣」は建設費4億6000万ドル(現在のレートで約704億円)の上、維持費は年間1000万ドル(同15億3000万円)がかかり、22年の北京冬季五輪で使用されるまでは放置された状態だった。

 今回のパリ五輪は会場の95%が既存の建物や若干の改修工事で使用。メイン会場は1998年のサッカーワールドカップ(W杯)で使用された「スタッド・ド・フランス(通称サンドニ)」といったように、財政負担は最小限にとどめられている。

 それでも世界的な物価高騰の折、大会総予算は約100億ドル(約1兆5374円)。選手村の建設費16億4000ドル(約2510億円)をはじめ、それなりの費用はかかっている。ただ協賛企業のサポートが多く、多額の放映権料(30億超ドル=約4600億円超)や入場料が見込めるだけに、組織委員会は黒字になるとしている(22年北京冬季五輪は黒字となった)。

 ちなみにコロナ禍で無観客という最悪の事態も重なった21年の東京五輪は、公式発表で154億ドル。当時のレートで約1兆7000億円と発表されているが、現在に換算すれば2兆3562億円。パリ五輪の1・5倍だった。

 高いか、安いか-。それはIOCが掲げる理念がどこまで浸透するかにかかる。自由、平等、平和、多様性…、そして未来に向けたサステテナブル、地球環境の保全という壮大なものへ。さまざまなメッセージを包含し、17日間の大会は幕を切った。【佐藤隆志】