F1第14戦木曜会見:波紋広がるチームオーダー。“素晴らしいチームプレーヤー”のボッタスと、歯切れの悪いストロール

AI要約

2024年F1第14戦ベルギーGP前、マッティア・ビノットがザウバーに加入し、CEOのアンドレアス・ザイドルがチームを去る。バルテリ・ボッタスは驚きつつも歓迎の意を示す。

チームのリーダーシップが変わり、チーム運営はリセットされる見込み。人材不足やマシンパフォーマンス向上の課題が明らかに。

ハンガリーGPでのチームオーダーに関するドライバーたちの意見や経験が交わされ、バルテリ・ボッタスも過去の経験を振り返る。

F1第14戦木曜会見:波紋広がるチームオーダー。“素晴らしいチームプレーヤー”のボッタスと、歯切れの悪いストロール

 2024年F1第14戦ベルギーGPの開催直前、フェラーリのチーム代表だったマッティア・ビノットがザウバー・モータースポーツAGに加入した。同時に、2026年からのアウディF1を引っ張っていくはずだったCEOのアンドレアス・ザイドルがチームを去るという衝撃的なニュース。しかしバルテリ・ボッタスは、まったく寝耳に水だったという。

Q:バルテリ、上層部が大幅に入れ替わります。どんな思いですか?

ボッタス:突然でびっくりしたよ。もちろんこの種のハイレベルの決定は、僕たちドライバーやチームメンバーの多くが直前まで知らされないのは当然だけどね。まったく予想外だったけど、もちろん喜んでマッティアをチームに迎え入れるつもりだ。

Q:現在のチーム運営に、どんな影響を与えそうでしょう?

ボッタス:すべてがリセットされるだろうね。リーダーシップが交代したら、平常運転まである程度の時間がかかる。マッティアがチームの長所、短所、改善の優先順位を把握するのに、少し時間がかかるだろうからね。

Q:チームが抱えている具体的な課題は?

ボッタス:あまり詳しく話せないけど、トップチームと比較すると明らかに人材が不足している。あとはマシンのパフォーマンス向上の問題だね。アップデートに際して、正しい方向性が必要だった。

「あまり詳しく話せない」と言いつつ、ボッタスは「車体アップデートが機能していない」と明言した。全10チーム中唯一ノーポイントの状況に、かなりの危機感を抱いているのだろう。

 ビノットのザウバー加入のニュースは、いまだに来季の移籍先が決まっていないカルロス・サインツ(フェラーリ)にとっても、他人事ではないはずだ。

Q:カルロス、ビノットの移籍のニュースについての反応を聞かせてください。フェラーリで一緒に仕事をしていたし、これがあなたの決断をさらに複雑にしていますか?

サインツ:マッティアのザウバー加入は、素晴らしいニュースだと思う。フェラーリで得た経験とノウハウをチームに持ち込めるからね。

Q:アウディからのオファーを、あなたは受けなかった。ビノットの加入が、あなたの考えに影響を及ぼす可能性は?

サインツ:あまりないかな。自分の将来については、まだ考えている最中だ。そしてドライバー市場と同じくらい、チーム市場にも変化があるからね。それらすべてを分析し、正しい決断を下すために、時間をかけるつもりだよ。

 話題はここで、前戦ハンガリーGPでの『チームオーダー』に移った。

Q:みなさんに質問です。先週のレースで、もしあなたがランド・ノリスの立場だったら、どうしていましたか?

ランス・ストロール:難しい質問だね。

Q:というと?

ストロール:難しい質問だ。

 ストロールがはっきり答えなかったのは、ハンガリーではアストンマーティンでもチームオーダーをめぐるゴタゴタがあったからだった。「順位を譲れ」という指示をストロールが無視したことで、フェルナンド・アロンソが激怒した一件だ。

Q:ケビンは?

ケビン・マグヌッセン:状況によると思う。チーム内での自分の立場や、どのような歴史があるかで、​​完全に左右されるからね。

Q:カルロスはマクラーレンにいましたが?

カルロス・サインツ:僕がいた頃は、簡単にワン・ツーを狙えるようなチームじゃなかった。ただチームオーダーはチームオーダーだ。最優先にすべきはチームの利益だ。僕は過去19年間のレースキャリアを、そうやってきた。もちろんF1もね。でもピットインでオスカー(・ピアストリ)を抜いたのは、ランドにとっては痛かったね。

Q:ダニエルは?

ダニエル・リカルド:カルロスに同感だ。こういうことは巡り巡って来るからね。ランドに与えられたアドバイスもよかったと思う。僕らドライバーは、すべてが見えていないからね。目の前の勝利だけを考えて、走っているわけだから。でもチームは、長期的なプレーを見据えている。F1はチームゲームであり、チームの、そしてチームメイトの助けが必要なんだ。

 そしてボッタスはメルセデス在籍当時、同じようなチームオーダーを何度も受けていた。

Q:バルテリ、あなたはまさに、同様の状況に陥ったことがありますね。

ボッタス:確かに経験がある。あれは、ええっと……。

リカルド:2018年のロシアじゃない?

ボッタス:それだけじゃなかったけどね。チームや状況によって、一定のルールがあることは当然だし、最後には自分に返ってくることだ。そして僕は常に素晴らしいチームプレーヤーだったし、今もそうだ。

Q:後悔はありますか?

ボッタス:いや。これまでの人生で、後悔はないよ。

 リカルドがすぐに「2018年のロシア」と、レース名を出したことには驚いた。それほど印象に残っていたということか。このレースでのボッタスは首位を快走していたが、ルイス・ハミルトンに譲れという指示に従った。

 しかしこれでボッタスは勝利へのモチベーションを失い、「チームを去ることを真剣に考えた」と、のちに明かしている。「最優先はチームの利益だ」「僕は素晴らしいチームプレイヤーだった」と言いつつ、彼らは当然ながら大きな葛藤を抱えているのだろう。

[オートスポーツweb 2024年07月26日]