1位ピアストリがなぜ後回し? ハンガリーGPで1-2フィニッシュのマクラーレンが採った不可解なピット戦略の真相

AI要約

マクラーレンが採った不可解な戦略により、ハンガリーGPでの優勝争いが大きく変化した。

ノリスとピアストリの順位逆転や、最終的に3番手のハミルトンとの差を考慮したピット戦略が鍵となった。

しかし、混乱を招く結果となり、ノリスはチームオーダーに悩み、結果的にポジションを譲った。

1位ピアストリがなぜ後回し? ハンガリーGPで1-2フィニッシュのマクラーレンが採った不可解なピット戦略の真相

 F1では時として奇妙に思える戦略が採られることがある。先週末のハンガリーGPがまさにそれで、外からではわかりにくい戦略によって優勝の行方が大きく揺らぐレースとなった。

 不可解な戦略を採ったのは優勝したマクラーレン。ランド・ノリスが1番手、オスカー・ピアストリが2番手と揃ってフロントロウからスタートし、そのまま1-2体制でレース後半に突入。先頭を走っていたピアストリが自身初優勝に向けて危なげない走りを披露していた。

 ここで2台に最後のピットストップのタイミングが訪れる。通常であれば先頭を優先してピアストリを先にピットインさせるところ、マクラーレンが先にピットに呼んだのは2番手を走行していたノリスだった。

 真夏のハンガリーGPはタイヤの劣化が激しく、先にピットインしたほうが有利となる。ピアストリが古いタイヤで走行し続ける中、新しいタイヤに履き替えたノリスはピアストリを上回るペースで走行。2周後にピアストリがピットストップしてコースに復帰すると、2人のポジションは逆転し、ノリスが先頭に立った。

 だがレース終盤になって、チームはノリスに対してピアストリにポジションを譲るように無線で指示を送り、ノリスもそれを受け入れて68周目のホームストレートでピアストリを先行させた。だったらマクラーレンはなぜ、ピアストリを先に呼ばなかったのか。アンドレア・ステラ代表はこう説明した。

「先にランドをピットインさせれば、こうなることぐらいわかっていた。でも、そのときわれわれにはふたつの懸念があった。ひとつは、タイヤの劣化だった。今年のハンガリーGPは暑く、予想以上に劣化が激しかった。あの時点でライバルの(マックス・)フェルスタッペン(レッドブル)がピットインしておらず、レース終盤の追い上げに備えてオスカーの最後のピットストップはできるだけ遅らせたかった」

 一方、先にノリスをピットインさせた理由は、ステラの言うふたつ目の懸念にある。

「タイヤ交換作業を確実に行いたかった。ライバルと3秒しかないタイミングでピットインさせれば、ピットクルーにプレッシャーがかかる。われわれは少しでも安全に作業を行うため、まだ差があるタイミングでランドをピットインさせた」

 ステラがこのときノリスのライバルと見ていたのは、3番手を走行していたルイス・ハミルトン(メルセデス)だった。そのハミルトンが先に最後のピットストップを行ったことでノリスとの差は徐々に縮まりつつあった。だからこそ、ハミルトンとの差にまだ余裕のある段階でピットインさせ、確実にハミルトンの前に戻して2番手をキープしようとした。

 つまり、先頭を走っていたピアストリには4番手から大逆転を狙っていたフェルスタッペンをマークさせ、2番手のノリスを3番手のハミルトンの前でレースさせることで、マクラーレンは確実に1-2フィニッシュさせる戦略を採っていたわけだ。

 しかし、それは自分たちのドライバーをも混乱させる結果となった。先頭に立った後でチームオーダーが発令された時、チャンピオンシップ争いでトップをゆくフェルスタッペンとの差を少しでも縮めたいノリスは、にわかに指示を受け入れられず、ためらっていた。