試練で高まった責任感。“高岡、水田の分も”の日章学園、日本一という目標は「変わらない」

AI要約

日章学園高(宮崎)は、怪我で主将が離脱し、エースも負傷する厳しい状況の中でインターハイに臨む。

代表選手たちは、チームを勝たせるために責任感を持ち、個々の力を合わせて試練に挑む決意を示している。

試合への闘志と高い目標意識を持つ日章学園は、チーム全体で困難を乗り越えることを目指している。

試練で高まった責任感。“高岡、水田の分も”の日章学園、日本一という目標は「変わらない」

 目標は変えずに、「日本一」だ。令和6年度全国高校総体(インターハイ)男子サッカー競技(福島)が27日に開幕する。日章学園高(宮崎)は1回戦で鵬学園高(石川)と対戦。これまで自分たちを助けてくれた選手たちのためにも勝ち上がる。

 厳しい状況の中で夏のトーナメント戦を迎える。サウサンプトン(イングランド)内定のU-19日本代表FW高岡伶颯主将(3年)が、6月29日のプリンスリーグ九州1部・福岡U-18戦の前半に左膝を負傷して途中交代。長期離脱を強いられ、インターハイ開幕5日前のトレーニングも参加せずにピッチサイドから声を掛け続けていた。

 高岡は昨年のU-17ワールドカップにU-17日本代表の一員として出場し、チーム最多の4得点。また、今年は日本高校選抜として活躍し、今回のインターハイ予選決勝でも2ゴールを決めて日章学園を全国大会へ導いている。その注目FWは国内外のクラブからオファーが届く中、6月にサウサンプトン入りを決断。今回のインターハイでは大会の主役候補として期待されていた。

 日章学園も6月の九州大会決勝(対龍谷高)を7-1で制し、4戦計16得点で7年ぶり2度目の優勝。プリンスリーグ九州1部でも優勝争いを演じているチームはインターハイの目標として、日本一を掲げていた。だが、エースが出場困難な怪我。選手たちは高岡を登録メンバー20名から外さずに、一緒に戦うことを決断したが、登録変更期限後に強力FW水田祥太朗(3年)も対外試合で足首に大怪我を負ってしまう。

 日章学園にとっては試練とも言えるような2つのアクシデント。圧倒的な得点力と走力、ハードワークでチームを引っ張る高岡、推進力十分の動きと抜群の走力で攻守に貢献する水田不在の影響は計り知れない。

 だが、原啓太監督は「6月ぐらいから状態も良かったんで少し残念ですけど、それでも、他にも何人かタレントがいるんで、そこの選手の力が上手く出るように。石にかじりついてでも勝ちにはこだわっていきます。端から負けるつもりはないですし、それは他の奴らが頑張ればいいだけなんで」。今後へ向けて他の3年生たちや新戦力の活躍にも期待。取材日のトレーニングでも、指揮官は「(どんな状況でも)強いチームは1点差でも、PK戦でも勝つよ」と選手たちに強いメッセージを送っていた。

 高岡、水田に代わって前線の柱となるのが、FW佐久川友杜(3年)だ。ポストプレーを得意とし、スピード、得点力も備えた万能型のストライカー。インターハイ予選決勝では交代出場で貴重な2点目を決め、高岡不在のプリンスリーグ九州1部・長崎U-18戦(7月13日)でも同点ゴールを決めている。

 より重圧のかかる立場となり、悩んだりも「ちょっとします」という。それでも、「(彼らが怪我をした際、)あの2人に助けられた試合も多くありますし、『自分が2人の分まで頑張ろう』と思いました。高岡と水田が怪我の状況なので、自分が2人の分まで頑張って活躍して、チームを勝たせればいいかなと思っています。チームが勝つことが大事なんですけど、個人としては1試合1点必ず決めて、チームを勝たせればなと思います」と恩返しの活躍を目指している。

 佐久川は寮で高岡と同部屋。高岡は今回の怪我について、「先は長いんで、こんぐらいでへたれてたら、っていう感じですね」と前向きなコメントをしていた。それに対して佐久川は、「(実際は)ちょっとヘコんでいます。悔しがってはいたと思います。でも、僕たちの前であんまりそういう姿を見せない」。悔しさを表に出さないエースの分も、活躍する意気込みだ。

 また、攻撃的なボランチMF川越廉斗(3年)も「中盤が点決めるっていうのは上に行っても大事な部分だし、(現時点では)FWの(水田)祥太朗、高岡もいないんで、そこで点取れたらチームも助かると思うんで、そこはもっと狙っていきたいと思います」とゴールや、前への姿勢で2人の穴を埋める考えを口にした。

 川越は1年時に高岡とともにインターハイに出場し、昌平高(埼玉)との3回戦(2-6)でゴール。その後に飛躍を遂げた同期から、大きな刺激を受けてきた。「高岡に負けないぐらい、やっぱりやらないといけないと思う。1年生から出てたのは自分と高岡しかいないんで、去年出れなくて今年出れるってことで、一昨年の結果を超えるっていうのと、チームとしては優勝を狙って、個人としてはあそこで結果出して、進路に繋げていきたいなと思っています」と誓う。

 そして、「強いチームっていうのは、(主力が不在の状況でも)勝っていくと思うんで。(2人が)いない中でも、やっぱりチームがもっとまとまってやっていけば勝てると思うんで、そこは大事にしていきたい」と力を込め、佐久川も「(日本一という目標は)変わらないです。自分は優勝目指して頑張る」と言い切った。

 日章学園には彼らの他にもJクラブ注目のレフティー、MF南創太(3年)や九州屈指のCB吉川昂我(3年)、県予選決勝で躍動したMF小峠魅藍(3年)らまだまだ実力者たちがいる。また、1、2年生の台頭も。高岡は「僕ら(自分と水田)のことを思いすぎて空回りしなければいいですけど、こいつらだったら大丈夫だと思ってるんで、あとはチームが一丸となれば、ほんと一番いいかなという風に思ってます。やれるんじゃないですかね。点を決めれば何とかなるかなと思うし、それもやってくれると思います」と期待した。

 そして、自身は「メンバーに入れてもらった以上は、メンバーに入れない人の分まで何ができるかってことを一番に考えたいと思っています」とコメント。また、「怪我でもやっぱ学ぶことは多いですし、プラスに捉えています。自分で言うのもあれですけど、怪我したら自分は(その後に)いいことあるんで、何かしら。だから、それを信じるのみです」。秋冬の大活躍のために、チームとともに成長する期間にする。

 勝ち上がった際の回復状況によってはエースの早期復帰の可能性もあるが、チームは絶対に無理をさせないという基本方針。「チームの代表として出るので、その責任っていうのはもっと持たないといけないし、やっぱチームをもっと勝たせるって意味で、もっと中心選手にならないといけない」という川越や「多分、自分が決めたら勢いに乗って日章らしいサッカーできると思います」という佐久川ら、各選手により責任感が芽生えていることは確かだ。大目標のプレミアリーグ昇格や選手権に繋がる経験をするためにも、目の前の一戦に全力。日章学園が試練を全員で乗り越える。