興國高校サッカー部 インターハイ初出場への軌跡(六車拓也監督)

AI要約

大阪府から初出場の強豪校興国高校と、6度目の出場となる阪南大学高校が令和6年度全国高校総体(インターハイ)に向けて準備を進めている。

興国高校は個の育成に力を入れ、プロ選手を輩出してきた強豪校で、昨年のインターハイ出場は初めて。監督就任1年で大阪予選優勝を果たした拓也監督が、チームの軌跡を振り返る。

不思議な力が働く劇的な予選を経て、選手のプレッシャーやチャレンジ精神の薄れる状況に直面。しかしチームと話し合い、自らの成長への集中を強調し、チームが吹っ切れていく過程を描いた。

興國高校サッカー部 インターハイ初出場への軌跡(六車拓也監督)

間もなく開幕する令和6年度全国高校総体(インターハイ)。激戦区の大阪府からは、初出場の興國高校(第1代表)、3大会ぶり6度目の出場となる阪南大学高校(第2代表)が駒を進めている。

興國高校は個の育成に定評があり、日本代表で活躍するFW古橋亨梧(セルティック)をはじめプロ選手を毎年のように輩出している強豪校。冬の選手権では令和元年度に全国大会出場を果たしているが、意外にもインターハイ出場は今回が初めてだ。

昨年のインターハイ予選後に監督に就任し、わずか1年で創部以来初のインターハイ出場、大阪予選優勝と新たな歴史を切り拓いた六車拓也監督が、インターハイまでの軌跡を語った。

 今回の予選は劇的な展開が多く、言葉では説明できない、何か不思議な力が働いている感じでした。「いつもならゴールに入っているのに……」というシーンがあったかと思えば、終了間際に奇跡のような勝ち方をしたり。これが応援の力なのだなと心が震える場面が数多くありました。

 リーグ戦(プリンスリーグ関西1部)5勝1分けと無敗のまま大阪予選に臨んだので、周囲からは順風満帆に見られていたと思います。でも実際は、予選直前の京都サンガF.C.U-18戦はチームに慢心が見て取れ、思ったようなゲームができずに引き分け(1-1)。大阪予選も1回戦(4-0茨木高校)、2回戦(1-0常翔学園)と勝ち進んだものの全体的に消極的で、内容はまったく良くありませんでした。

 あとから考えれば、選手には相当なプレッシャーがかかっていたのでしょう。「負けたくない」、「勝たなアカン」。インターハイへの想いが強すぎて、日々大切にしてきたはずのチャレンジ精神が薄れてしまっていました。

 次(準々決勝)の相手は前年の優勝校でもある強豪・金光大阪。このままでは自分たちらしさを出せないまま終わってしまうと考え、選手たちと話し合いました。

 何のためにサッカーをしてきたのか? 一番大事なことは? 目の前の勝ち負け? 自らの成長?

「勝敗ではなくチャレンジすることに100パーセント集中しよう」。そう確認し合ったことで吹っ切れたようです。とはいえ、金光大阪戦に向けたチームの不安は小さくなかったと思います。それまで思うようなサッカーができていない中、ケガの影響などでスタメンの顔ぶれが6人代わり、中にはリーグ戦にも出ていない新しい選手もいましたから。

 しかし、いざ試合が始まると、選手たちは腹をくくってのびのびと、難しい展開ながら“らしい”戦いをしてくれました。

この試合は延長戦の末に勝った(1-0)のですが、実は私は決勝点を見ていません。序盤から膠着状態が続き、延長後半に入っても拮抗したまま。これはPK戦までいくなとキッカーの順番を考えていたら、突然「うおぉーーー!」と大きな歓声が上がって……勝利の瞬間を見逃していました(笑)。