「控えが嫌ならグラウンドに来るな」"日本一が当たり前"の大阪桐蔭西谷浩一監督が選手にかける厳しい言葉

AI要約

西谷浩一監督は甲子園での通算勝利数1位であり、選手のモチベーション管理やチームビルディングに優れている。

大阪桐蔭は毎年高い成績を残すチームであり、厳しい環境での練習量や個とチームのバランスを重視している。

西谷監督のマネジメント能力や個性を活かしたチーム作りは、他の監督とは異なる特徴を持っている。

甲子園での通算勝利数が1位(69勝)の大阪桐蔭高校の西谷浩一監督(社会科教諭)。これまで夏10回、選抜13回出場し、優勝は夏、センバツともに各4回ずつ。どこが他の監督と違うのか。野球評論家のゴジキさんは「西谷監督のチームビルディングは、『“個”を伸ばすためならいったんチームワークを捨てろ』という言葉に象徴されている」という――。

 ※本稿は、ゴジキ(@godziki_55)『甲子園強豪校の監督術』(小学館クリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■甲子園通算勝利数1位(69勝)は大阪桐蔭の西谷浩一監督

 現代の高校野球において、常にトップクラスの強さを見せており、「勝者のメンタリティ」を兼ね備えているのが西谷浩一氏率いる大阪桐蔭だ。西谷氏は甲子園で、非常に高い成績を収めている※1。

 前任者と西谷氏が率いた大阪桐蔭の甲子園成績だ。

----------

・長沢和雄氏就任時:7勝1敗、春の甲子園に1回、夏の甲子園には1回出場。夏優勝1回。

・ 西谷浩一氏就任時:69勝14敗、春の甲子園に13回(交流試合含む)、夏の甲子園には10回出場。春優勝4回、夏優勝4回、国体優勝4回、明治神宮野球大会優勝2回。

----------

 一人の選手が数年から十数年と長く続けるプロ野球とは違い、3年間で選手が丸ごと入れ替わり、世代ごとに選手の能力や個性が違う高校野球において、10年以上結果を残し続けることは、かなり稀有(けう)なことである。大阪桐蔭は、どの世代も「勝って当たり前」と見られる中、毎年のように結果を出すチームをつくり上げる西谷氏の手腕も光る。

 西谷氏の凄さの一つは、選手のモチベーション管理を含めたマネジメント能力だ。戦力的に充実している年が多いため、大阪桐蔭は「優勝して当たり前」と見られがちだが、優勝校に相応(ふさわ)しい練習量を誇っており、OBの西岡剛(つよし)(元・阪神タイガース)や森友哉(ともや)(現オリックス・バファローズ)は「日本一の練習量※2」とコメントしている。

 これは、高校野球の強豪校に限らず企業などでも同様だろう。業界全体、社会全体の中でトップに立ち責務を果たしていくには、こうした厳しい、ハードルの高い環境に身を置くことが一つの有効なルートでもある。

 また、チームビルディングの面では、個とチームのバランスを考えている。西谷式マネジメントの根幹は、圧倒的な「個」の力と団結力だ。

 「個の結集がチームじゃないですか。小さな粒が集まったら、こぢんまりしたチームにしかならないので、いかに一人を大きくできるかということです。野球は団体スポーツですけど、個別性が高いのが特徴です。なぜなら、絶対にみんなに打席が回るからです。個別性が高い競技であるので、チームワークと個性の両方の要素を持っていないといけない。オフなどの個を高める時期に、みんなが同じ練習をしているようではいけないということです※3」と話すように、大きな個の力を上手くまとめてチーム力に昇華させるよう意識している。