金足農6年ぶり甲子園切符 吉田大輝154球完投“カナノウ旋風”兄輝星超える日本一へ/秋田

AI要約

金足農の吉田大輝投手が秋田大会を熱投し、18年夏の甲子園準優勝投手である兄を超えるために強い覚悟を持って甲子園出場を果たした。

大輝投手は16安打を許しながらも154球を投じ、5失点(自責2)の完投で秋田商を下し、甲子園への道を切り開いた。

兄を超えるという強い意志を持ち、個人としての成長を目指す大輝投手に注目が集まっている。

金足農6年ぶり甲子園切符 吉田大輝154球完投“カナノウ旋風”兄輝星超える日本一へ/秋田

<高校野球秋田大会:金足農6-5秋田商>◇21日◇決勝◇さきがけ八橋球場

 兄を超えるための、スタートラインに立った。金足農(秋田)を18年夏に甲子園準優勝に導いたオリックス吉田輝星投手(23)の弟大輝投手(2年)が、兄以来となる夏の甲子園に導いた。決勝では秋田商に16安打を浴びながらも154球を投げ、5失点(自責2)完投。秋田大会は4試合で4完投2完封と、6年前の兄をほうふつとさせる熱投劇で、甲子園への道を切り開いた。兄も果たせなかった日本一を目指し、再び“カナノウ旋風”を起こす。

    ◇   ◇   ◇

 甲子園出場を決めたシーンは、6年前と同じだった。だが、マウンド上で晴れやかな表情だった兄輝星と違い、大輝は感極まっていた。序盤から球が浮き、強打の秋田商打線に「記憶にない」という16本もの安打を浴びた。9回は1点差とされ、2死満塁の大ピンチ。相馬英典捕手(3年)の「おれを信じろ」の言葉を胸に、思い切り腕を振った。ワンバウンドのスライダーで、バットを振らせた。「しんどかった」。一気に感情があふれ出た。

 兄を超えるために同じユニホームに袖を通した。甲子園のアルプス席で観戦した18年夏はまだ小学生。シャキーンポーズで一世を風靡(ふうび)し“カナノウ旋風”の中心にいた兄を「甲子園で活躍して。あれだけ応援されててすごいな」と素直に感じた。だが数年後、「吉田輝星の弟」として比べられることが、高校の進学先を迷わせた。「最初は怖いなっていう気持ちもあったんですけど。兄を超えるという一番わかりやすい結果は、金足農業で出すのが一番だと思いました」。強い覚悟で決断した。

 当時の輝星を知る人たちは舌を巻く。最速145キロの直球と抜群の制球力が武器。テンポも良く、投球間隔が3秒を切る時もある。18年夏の甲子園メンバーの大友朝陽さんが「変化球は全然大輝の方が良いかな」と話せば、中泉一豊監督(51)も「2年生の時点では、吉田大輝の方が器用さはありますね」と目を細めた。父正樹さん(48)も「中学でポニーリーグに入って。ボールが(軟球から)硬球に変わってもすぐに投げられたんですよね」と不思議そうな表情で明かした。

 「兄を超える」。その意味は「全国制覇」だ。「ここからが本番。また切り替えて甲子園に挑みたい」。目の前の歓喜を仲間と思い切り味わうと、すぐに表情を引き締めて誓った。「吉田輝星の弟」ではなく「吉田大輝」として、聖地で大きく輝く。【黒須亮】

 ◆18年夏の吉田輝星 秋田大会では全5試合を1人で投げ抜き(3完封)、43回で57奪三振。第100回記念大会の甲子園では、1回戦から準決勝まで5試合連続完投で秋田県勢103年ぶりの決勝進出。決勝では藤原恭大、根尾昂らの大阪桐蔭に5回12失点と打たれたが、秋田大会初戦から11試合で1517球を投げ、119三振を奪った。