降格圏と勝点3差。一部からはブーイング。それでも川崎の“火は消えていない”と信じたい
川崎はC大阪との試合で5連続のドローを記録し、勝利を挙げられずに苦しんでいる。
大島僚太のプレーが光る中、チームは勝ち越しゴールをVARで取り消され、苦しい試合展開となった。
チームは苦しい状況にありながらも、勝利への執念を示し、進化を続けている。未来に向けて希望を託す。
[J1第23節]川崎 1-1 C大阪/7月14日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
川崎が“ドロー沼”から抜け出せずにいる。
7月14日にホームで迎えたC大阪戦は、前半からチャンスを作り出し、36分にはマルシーニョのゴールで先制するも、後半に反撃を受けて終盤に失点するデジャブのような展開で、5試合連続のドローとなった。
1-1で迎えた79分には千両役者のFW小林悠が劇的な勝ち越し弾を決めたかに見えたが、VARで数プレー前でボールがラインを割っていたとして、ゴールは取り消しに。ここで決まらないのが今の流れと捉えるべきなのかもしれない。
降格圏とは勝点3差。しかも4日前には、連覇を目指した天皇杯でJ2の大分に敗戦。なかなか厳しい状況に追い込まれていると言えるだろう。
前半のいくつかの決定機を仕留め切れていれば、話は早かったわけだが、やはり勝てていないプレッシャーなのか、フィニッシュで固さが見え、そのツケを足が止まり出した終盤に支払わされれる――。同じ課題を克服できず、勝利に結びつけられていない現状にフラストレーションを溜めているサポーターもいるのだろう。ここ数試合は川崎には珍しく、一部からブーイングが飛ぶ様子も見られる。
もっとも不甲斐なかった大分戦から改めて奮い立ち、C大阪戦は気持ちのこもったパフォーマンスを披露。
右サイドハーフに入ったFW山田新が、左SBを務めたMF橘田健人らが力の限り走り切り、守備でも身体を張る。途中出場のMF家長昭博が自陣深くまで戻り必死にディフェンスをする。理想とは離れたサッカーと言えるのかもしれない。しかし、がむしゃらに勝利にこだわる姿は、成果に結びつかずも心を打つものがあったと評せるだろう。
そして改めての驚きと残念さが滲み出たのがボランチで先発した大島僚太のプレーだ。怪我に泣き続ける“川崎の象徴”が示した前半のプレーはまさにスーパーだった。ワンタッチで局面を打開するパスを何本も通し、気の利いたポジショニングでポゼッションの中心になる。味方は誰もが大島をまず見て、彼にボールが入ることでチームが動き出す。やはり稀有な選手であった。
もっともこの試合は前半の終わり頃にアクシデントを抱えたようで、前半のみで交代。後半、チームがやや浮き足立ったように見えたのは彼の不在の影響があったあったようにも感じた。
今後彼がどれほどの時間、ピッチに立てるかは大きなポイントになってきそうだ。
勝てない現実はある。大島の状態も不確定要素が多い。ベテランが叱咤激励し、中堅がそれに応え、若手たちも付いていく。必死に戦っても勝点3が遠い現状はダメージが大きいようにも映る。
それでもブレずに戦い続けること以外に今は道はないのだろう。降格しては元も子もないが、システムを4-2-3-1にしてから内容は良くなっている。
多くが入れ替わった今季は新陳代謝を高めている一方で、本当に一歩ずつ前に進むチームなのだろう。それはかつての栄光を掴んだ先輩たちと比較することはできない。今のチームには今のチームの進歩のスピードがある。
苦しい日々から逃げず、彼らが勇気を持ち続け殻を破ってくれることを、未来につながることを今は信じたい。川崎の火は消えていないと、雄叫びを上げる日を待ちわびながら。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)