「他人の見た夢の中身がわかるんです!」…東大教授・池谷裕二が語る「脳研究」のスゴい最前線

AI要約

脳の研究が急速に進展し、人間の脳の活動や夢の中身をAIを使って解析できるようになっている。

AIを活用した脳の解析は、精神医療領域で特に進化し、診断や治療に新たな可能性をもたらしている。

脳の研究によって、夢の中身を予測し、自動でイラストを描くAIなど実用化された技術が多数存在している。

「他人の見た夢の中身がわかるんです!」…東大教授・池谷裕二が語る「脳研究」のスゴい最前線

 他人の夢の中身がわかる、見えないはずの赤外線が見える――猛スピードで進展する脳の研究によって、かつては不可能だと思われていたことが現実のものになりつつある。

 いったい人間の脳はどこまで奥深いのか。最新刊『夢を叶えるために脳はある』の発売を機に、日本の脳研究の第一人者である東京大学教授・池谷裕二氏に聞いた。

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いけがや・ゆうじ/1970年静岡県生まれ。脳研究者。現在、東京大学薬学部教授。著書に『記憶力を強くする』『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』(講談社ブルーバックス)など

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 この10年間で、脳の研究は驚くほど進歩しました。その成果を応用すれば、もはや脳を調べるだけで、その人が考えていることや見ている夢の中身までわかるようになってきています。

 その最大の要因はAIが著しく発展し、膨大な脳のデータをより詳しく解析できるようになったことでしょう。

 見ているものに応じて、人間の脳の反応は大きく異なります。たとえば、テーブルの上にあるコップと窓の外の樹を見ているときでは、脳の活動はまったく違う。

 だから、さまざまなものを見たときの脳の活動パターンのデータを大量に集めておけば、AIを用いていまの脳の状態と照らし合わせるだけで、何を見ているのかを高い精度で判断できるわけです。

 同じく夢を見ている間の脳の活動パターンを集めておけば、AIによる解析でおおよその内容がわかります。もちろん100%正確ではありませんが、「あなたが見ていたのは、豪邸が立ち並ぶ大通りを歩いている夢ですね」くらいには当てられるようになっている。

 そこに自動でイラストを描くAIを連携させれば、自分が見た夢をそのまま絵で出力することも可能です。

 すでに身の回りで実用化されている脳に関わるテクノロジーも数多くあります。日本でとくに活用が顕著なのは、精神医療の現場です。

 従来の精神科の診断は、個々の医師の考え方、もっと言えば各人の「主観」によるところが非常に大きかった。

 たとえば問診で「なんとなく、やる気が出なくて……」と答えた患者さんを、うつ病と統合失調症のどちらなのか診断するのは、実は非常に難しい。実際に精神科では、当初は間違った診断が下されていて、後から病名がひっくり返るケースも少なくありません。

 しかしAIを用いて多くの脳画像をしらみつぶしに調べた結果、うつ病の患者さんの脳には特有の活動パターンがあると判明しました。この成果によって、すでに精神医学界では治療の常識が塗り替えられようとしています。