一人前の社会人なら知っておきたい…経済格差問題で頻出の「ジニ係数」について完璧に理解しよう!
算数の基礎から学び直すために、桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』からの抜粋で、ジニ係数について説明されています。
2つの国の所得を比較して、ジニ係数を算出するための例が示されており、アメリカの経済学者マックス・ローレンツによるローレンツ曲線とジニ係数の関連性も説明されています。
ジニ係数は、ローレンツ曲線と三角形の面積を用いて計算され、所得格差を示す指標として使われています。
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食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。
長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。
『大人のための算数力講義』連載第6回
『MARCHが東北大より格上…⁉「私立文系」が入試で数学を必須にしないのは「醜い偏差値競争」のせいだった』より続く
格差を巡る議論は、年々高まってきている。そこで、格差問題を論じるときによく用いられるジニ係数について、例を用いて説明しよう。
いま、国民が3人で構成されている2ヵ国ア、イを想定し、それぞれの国民の年収は低いほうから並べて以下の通りとする(単位は万円)。
(ア国)300、900、1200
(イ国)200、200、2000
イ国はア国より格差が大きい国であると思うだろう。ただ、どちらの国民の平均年収も800(万円)である。実際、
ア国の平均年収 (300+900+1200)÷3=2400÷3=800
イ国の平均年収 (200+200+2000)÷3=2400÷3=800
となる。
ここから、ジニ係数を算出するために必要なグラフを準備しよう。
ア国に関して、年収の低いほうから1人分の合計年収は300(万円)で、年収の低いほうから2人分の合計年収は
300+900=1200(万円)
で、年収の低いほうから3人分(=全国民)の合計年収は
300+900+1200=2400(万円)
である。
いまxy座標平面において、x座標では人数、y座標では上記人数分の合計年収をとるとする。したがってア国では、次の3点をとることになる。
A(1, 300)、B(2, 1200)、C(3, 2400)
さらに原点(0,0)をO、点(3,0)をHとし、線分OC、CH、および折れ線O-A-B-Cを描き込むと図1のグラフになる。
折れ線O-A-B-Cは1905年にアメリカの経済学者マックス・ローレンツが発表したものであり、ローレンツ曲線と呼ばれている。
ジニ係数は、ローレンツ曲線を参考にしてイタリアの統計学者コッラド・ジニによって1936年に発表された指標で、線分OCとローレンツ曲線O-A-B-Cで囲まれた斜線の部分の面積を、三角形OCHの面積で割ったものである。