家庭の情シスお父さん、娘用のPC選びを拝命する

AI要約

私立中高一貫校へ進学した長女が自身のノートPCを準備する必要がある状況について語られる。

学校からのICT端末の指示や推奨端末の紹介、家庭内のICT環境について説明される。

子供の興味関心や将来を考え、Chromebookではなく拡張性やスペックの高いPCを選ぶべきだと述べられる。

家庭の情シスお父さん、娘用のPC選びを拝命する

この春、我が家の長女が中学校に進学しました。公立中学校ではなく私立の中高一貫校への進学にともない、学習で使用するICT端末を各家庭で準備するよう学校から指示がありました。つまりBYODのため、子供に「自分専用のノートPC」を与える必要が生じたのです。

筆者自身は、大学生の頃からPCを触り始めて以来、仕事でもPC関係のニュースサイトの記者やインターネット関係の雑誌や書籍の編集、そして現在はIT関係のライターと、仕事をする上での道具として、そしてメシのタネとして30年ほどPCを触り続けてきました。

また、20代の頃には自作PCを趣味として、PCを触ること自体を楽しんでいましたし、現在でも暇つぶしのネットサーフィンやネットショッピング、電子書籍での読書などなど、プライベートで利用する端末としても、スマートフォンやタブレットよりもPCを触っている時間が多く、まさにPCジャンキーな人生を歩んできました。

そんな立場から、「新中学生のPC選び」というミッションについて、どのように考え、どんなPCを選択するに至ったのか、皆さんの参考になればと思い書き記してみたいと思います。

■ 「新中学生のためのPC選び」というミッション

中学校への進学にあたり、小学5年生で受験を決意した我が家の長女。周りからは遅れ気味で受験勉強のスタートとなりましたが、本人の頑張りもあって無事に志望校の一つへの進学が決まりました。

入学が決まると、さっそく準備に向けたガイダンスが始まります。Zoomを使ったオンライン説明会が何回か開かれ、授業で利用するICT端末の準備について説明がありました。

娘の中学校では、「ICT端末を使った情報発信と情報共有を促進させるため、生徒一人ひとりに対し、スマートフォンではない『キーボード付きのICT端末』の所有を義務付け」(学校からの案内より引用)ており、BYODという形でのICT端末利用を定めています。そのために、授業を行う上でPCに必要なスペックの指示と共に、それを満たしている推奨端末の販売が案内されました。

学校からのICT端末の用途についての説明は以下のような内容でした。

・Google Classroomを利用した教材配信と課題提出

・Google Workspaceを利用したレポートやプレゼンテーションの作成

・Gmailによる生徒・保護者への各種連絡や案内

・Google Driveによるデータ、ファイル等の共有

・その他

一見してわかるように、この学校でも最近の多くの教育機関にならって、ICT基盤にGoogleのサービスを全面的に取り入れており、生徒にはひとりずつGoogleアカウントが発行されます。このアカウントには、保護者のメールアドレスも同時に発行され、学校からの連絡はすべてこのメールアドレス宛に届きます。

本格的に授業が開始された5月時点で娘に聞いたところ、「毎日、Gmailに授業の連絡が来て、Google Classroomに何かの課題がアップされるから、放課後もチェックを忘れると大変」とのことでした。この時も理科の課題で地震について調べたことをGoogleスライドにまとめているところでした。

ちなみに保護者宛にも、保護者会や体育祭の案内といった連絡がかなり頻繁に届き、直接は関係のない内容(高校生向けの進学関係のイベントとか)も含めると、毎日何かしらのメールが届きます。

なお、学校による推奨端末は、AsusのChromebook「Flip CR1(CR1100)」でした。GIGAスクール端末として広く採用されている機種で、Chrome OSを搭載した2in1タイプのノートブックです。CPUやメモリ、ストレージといったスペックで見ると、WindowsのノートPCとしては厳しいですが、Chromebookとしては標準的なものになります。

【Asus Chromebook Flip CR1の主な仕様】

OS:ChromeOS

CPU:インテル Celeron N4500 プロセッサー

メモリ:4GB

ストレージ:eMMC 64GB

ディスプレイ:1366×768ピクセル、11.6型タッチパネル

フォームファクタ:2in1

重量:1.42kg

価格:5万円強

上記仕様のハードウェアの他に、端末価格のなかに3年間の盗難までカバーする保証サービスが含まれており、それも加味して考えると、かなりリーズナブルと言えます。

また、推奨端末を購入せず、自前で端末を用意することもでき、その場合は以下の仕様を満たすことを条件に、持ち込みが認められています。

【推奨端末以外の場合の学校からの要求仕様】

OS:最新版のOSが利用可能

キーボード:必須(iPad等のタブレットでもキーボードが利用できるならばOK)

ディスプレイ:9.7~14型(タッチパネルは必須ではない)

バッテリ駆動時間:カタログ値で9時間(ACアダプタなしで授業中は連続動作が可能な時間)

カメラ:必須(リモート授業のため)

その他:HDMI出力、Google Chromeが動作可能、生徒自身がファイルのダウンロード、アプリケーションのインストールが可能、Wi-Fi(WLANは不要)

CPUやメモリといったパフォーマンスに関する指定はないものの、「最新版のOSが利用可能」という項目によって、セキュリティ面も含めて細かいスペックについては担保しているのだと思われます。

バッテリー駆動時間がカタログ値で9時間というのは、学校では充電できないという事情(教室にコンセントが足りない)から来たものですが、今どきのモバイルノートの多くがカタログ値で10時間を越えていることから、余り問題とならないでしょう。

それ以外の項目に関しても、現在の一般的なモバイルノートなら標準的な仕様です。だから、最初に説明会でICT端末についての話を聞いたときは、推奨端末のコストパフォーマンスの良さもあって、正直なところ「推奨端末でいいかもしれない」と思いました。

■ 中学校におけるICT端末の整備状況

ここまでで「中学校にはGIGAスクール端末があるんじゃないの?」と思った方がいるかもしれませんので、念のため補足しておきます。

ご存じの通り、文部科学省の「GIGAスクール構想」のもと、公立の小中学校では児童・生徒ひとりにつき1台のICT端末が行き渡るように、公的予算により整備が進められてきました。長女が通っていた都内の公立小学校でも、4年生になった2021年からHPのChromebookが貸与されました。

一方、私立学校では事情が異なっています。端末整備に対する国の補助金が、私立校は公立校の半分となっているため、それを越える部分の支出については学校側の負担となります。このため最新のデータではありませんが、2021年3月末の時点では、私立小中学校の8割がICT端末の補助金を国に申請していなかったとの調査もありました。

ただし、私立学校は独自の教育方針やカリキュラムに取り組んでいるところが多く、ICT教育に関してもGIGAスクール構想の以前から熱心に取り組んでいる学校は少なくありません。そうした学校では、あらかじめ志願者とその保護者に説明した上で、各家庭で端末を準備させていたり、独自の予算で端末を整備したりするところが多いようです。

娘の進学先も、そうした学校のひとつというわけです。

■ 我が家のICT環境はこんな感じ

続いて、我が家における子供のICT環境について説明しておきましょう。

スマートフォンに関しては、長女には小学6年生の夏から持たせています。当初は中学校への進学に合わせてと考えていましたが、小6の時点で同級生の9割以上がスマートフォンを所持しており、LINEによるコミュニケーションが盛んに行われていたことや、学習塾からの帰宅が午後10時近くになる場合もあるため親子間の連絡手段として、予定より早い時期ですが持たせることにしました。

この時に、利用に際してのルールや、ペアレンツコントロールの設定などを話し合った上で、利用時間やアプリのインストールなどに制限を付けています。端末はAndroidでしたので、Googleが提供する「ファミリーリンク」というサービスを利用しています。

このサービスは、親と子のGoogleアカウントを紐付けて、アプリや利用時間の制限などの設定、利用状況や位置情報の把握などが行えるという、いわゆる家庭向けのMDM(モバイルデバイス管理)を実現するものです。無償で利用でき、また家庭内で求められる要件にはほぼ対応しているので、子供のスマートフォンの管理方法について検討されている方なら、一度触ってみることをオススメします。

PCについてですが、リビングにノートPCを1台置いてあり、自由に触れるようにしています。ただし、長女には積極的にPCを使う目的もモチベーションがないようで、たまに何かを検索するくらいにしか使っていませんでした。それより、AndroidタブレットでYouTubeを見ていることの方が多かったです。

長女は、父親が家にいる時間の多くでPCに向き合っていて、読書もタブレットでし、旅行先にもPCを持っていき仕事をしている姿を見て育ったわりには、PCそのものへの興味はかなり薄い様子。

もちろん、暇な時間があればYouTubeを見たり、LINEで四六時中メッセージを送り合ったり、音声通話しながら一緒に宿題をやったりと、今どきの小中学生らしい使いこなしはしていますが、PCというモノに対してはさして興味がなさそうなのは、IT系ライターの父親として少しだけ寂しい気もします。

■ 子供が自由に使えるPCが、Chromebookでいいのか?

さて、娘が中学校で使うICT端末の話に戻ります。

端末の準備は、入学式の前日に行われる新入生向けオリエンテーションまでとされていました。ただ、推奨端末については、その1カ月ほど前に購入申込みの締め切りが設定されていたので、検討に使える期間は約1カ月ほど。

筆者は家族から「我が家の情シス担当」と認識されているため、娘のICT端末についても妻から「(お金も含めて)お願いね」と言われました。推奨端末を購入するにしろ、他で調達するにしろ、1カ月以内に結論を出さないといけません。

先述の通り推奨端末は、主に利用するアプリケーションや保証も含めたコスパを考えると、十分に魅力的なものでした。しかし、推奨端末で気になったのは、約1.4kgという重量です。モバイルノートが1kgを切るモデルが珍しくなくなった昨今、1.4kgの端末は正直なところかなり重い方です。中学生になると、勉強道具だけでなく部活もあって、さらに長女の学校は給食がないためお弁当も必要です。それを考えると、およそ400gの重量差は無視できません。

また、長女がこれから本格的にPCを使った学習を開始し、そこから興味関心が広がっていくなかで、Chromebookの拡張性では少々心もとありません。例えば、動画をいろいろ撮って編集したくなったり、写真をいろいろ撮ってレタッチしたくなったり、3Dプリンターのために3D CADが使いたくなったりしたときに、Chromebookでそうしたユースケースに十分に対応出来るのか。

今はまだ、興味を持てなくても、学校生活のなかでこうした作業を行う機会が訪れる可能性は高いでしょう。もちろん、昨今は多くのウェブアプリケーションが存在していますが、グラフィックのパフォーマンスといった、ハードウェアのスペックに依存するようなアプリケーションや、周辺機器といったハードウェアの拡張が必要な目的を果たすには、やはりChromebookだと物足りません。

もちろん、学校の推奨端末である以上は、授業の枠組みの中でアプリケーション等を利用するうえでは、十分なスペックであることは間違いないでしょう。ただし、子供の好奇心が学校の枠組みの外へ広がり、そこでICT端末を必要としたときに、Chromebookだけでは不十分だと筆者は考えます。

したがって、子供に自分専用のPCを用意するなら、それは現時点での学校の要求仕様を満たすだけでは不十分でしょう。自由に持ち運べる軽量さ、様々なアプリケーションを自在に使えるCPU等のスペック、多くの周辺機器を利用できる拡張性を持った、PCを用意するべき、だと筆者は考えました。

では、具体的にどのようなPCが良いのでしょうか。実際に、どんな要件を考え、どのPCを選んだのかその結果については後編でお伝えします。