「三体問題」が解けないことを証明したのは誰?天才数学者・ポアンカレの証明と「カオス」の発見

AI要約

ポアンカレは「三体問題が解けないことを証明した」といわれます。しかし、「二体問題」の一般解を求める方法(「求積法」)では、「三体問題」の一般解を求めることができないということは1887年にドイツの天文学者ハインリヒ・ブルンスによって証明されていました。

浅田秀樹さんの著書『三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題』から、ポアンカレが証明した驚くべき事実をご紹介します。

ブルンスによる証明がなされた2年後の1889年、スウェーデン国王兼ノルウェー国王のオスカル2世の60歳の誕生日を祝うために、数学に関する懸賞問題が公表されました。

「三体問題」が解けないことを証明したのは誰?天才数学者・ポアンカレの証明と「カオス」の発見

ポアンカレは「三体問題が解けないことを証明した」といわれます。しかし、「二体問題」の一般解を求める方法(「求積法」)では、「三体問題」の一般解を求めることができないということは1887年にドイツの天文学者ハインリヒ・ブルンスによって証明されていました。それではいったい、ポアンカレは何を証明したのでしょうか?

浅田秀樹さんの著書『三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題』から、ポアンカレが証明した驚くべき事実をご紹介します。

(この記事はブルーバックス『三体問題』の内容を再構成したものです)

ブルンスによる証明がなされた2年後の1889年、スウェーデン国王兼ノルウェー国王のオスカル2世の60歳の誕生日を祝うために、数学に関する懸賞問題が公表されました。

このオスカル2世の懸賞問題とは、厳密な数学的な定義・用語を避けて筆者なりに意訳すればおおよそ以下のようなものです。

“ニュートンの万有引力を受けるN個の天体を考え、それらが衝突しないことを仮定する。この場合に、各天体の位置座標を時間の関数として、その関数を任意の時刻で成り立つ級数展開した表現を見つけよ”

1887年の時点で、求積法では「三体問題」は解けないことが判明したので、厳密な関数の形でその一般解を求めることを、おそらく当時の数学者たちも断念したのでしょう。厳密な形を得ることが不可能なら、級数展開で求められないか、という具合に問題設定を変更したのです。

ここで「級数」とは、数あるいは関数などを足し上げて得られる量の和です。足し上げが無限に続く場合でも構いません。とくにその場合を「無限級数」とよぶことがあります。

級数の例としては、高校数学で登場する「数列」や大学数学で学ぶ「テイラー展開」などがあります。いずれにせよ、当時の国際的な懸賞問題に選ばれたことからも、「万有引力におけるN体問題」が科学界における重要な研究課題であったことが分かります。

懸賞課題に対する論文提出の締め切り日は1889年6月1日でした。