世界最大のトカゲのコモドドラゴン、歯を鉄のコーティングで強化、爬虫類で初の発見

AI要約

コモドドラゴンの歯は鉄のコーティングで強化されており、獲物を引き裂くのに適している。

従来の考えに反して、爬虫類の歯にも鉄が含まれる可能性があり、新たな研究の展望が広がる。

コモドドラゴンの歯の研究から、恐竜の歯の進化に関する示唆を得る可能性がある。

世界最大のトカゲのコモドドラゴン、歯を鉄のコーティングで強化、爬虫類で初の発見

 世界最大のトカゲである「コモドドラゴン」(コモドオオトカゲ、Varanus komodoensis)の歯はすばらしい。長くて湾曲したギザギザの歯は、獲物の肉を切り裂くのに完璧に適応している。2024年7月24日付けで学術誌「Nature Ecology & Evolution」に掲載された研究により、この見事な歯が鉄のコーティングで強化されていることが明らかになった。

「爬虫類の歯で鉄を確認したことはこれまでありません。とても興味深いです」と、米ニューヨークのダーメン大学の古生物学者で、論文の共著者でもあるドメニック・ダモーレ氏は言う。

 ビーバーやラット、トガリネズミなどの齧歯(げっし)類の歯には、金属が含まれており、歯が強化されている。

 対して、爬虫類の歯は一生の間に何度も生え替わるため、磨り減った歯を処分できる。また、コモドドラゴンは毒を持っており、獲物を鋭い歯と爪で引き裂く前に麻痺させられる。

 そのため、科学者たちはずっと爬虫類には武器である歯を鋭く保つ特別な適応はないと考えていた。

 だが、今回の発見により、新たな疑問も生じる。他の爬虫類の歯にも鉄は存在するのだろうか? 恐竜のような古代の爬虫類の歯はどうだろうか? 他にどのような歯の適応があるのだろうか?

「(今回の研究は)爬虫類はまだ多くの驚きを秘めていることを教えてくれます」と、英キングズ・カレッジ・ロンドンの古生物学者であり、研究を率いるアーロン・ルブラン氏は言う。「今回の研究は全く新たな研究の道を切り開くものです」

 ルブラン氏はコモドドラゴンを研究しようとしたわけではなかった。氏が興味を持っていたのは肉食恐竜の歯だ。しかし、それは難しい研究テーマだった。

「恐竜の歯が何千万年も地中に埋まっていると、機械的な変化だけでなく、化学的にも多くの変化が起こります」と、ルブラン氏は言う。「恐竜の歯から有意義な情報を得るのは非常に難しいのです」

 そこで注目されるのが、長く湾曲したギザギザの歯など、絶滅した恐竜と共通の特徴を持っているコモドドラゴンだ。おかげで、歯の進化に関する洞察が得られるかもしれない。

 ルブラン氏が博物館の標本からコモドドラゴンの歯を調査し始めたとき、あるパターンに気付いた。ギザギザの鋸歯状の縁にオレンジ色がついていたのだ。

「おそらく3、4回見て、このオレンジ色は餌を食べた後のシミだと思い、完全に見逃していました」とルブラン氏は言う。

 だが、研究を続けるなかで、他の科学者や博物館の学芸員の助けを借りて、氏はコモドドラゴンの頭蓋骨を調べ始めた。すると、オレンジ色のパターンは標本全体に共通していた。

 歯を切断してさらに化学分析をおこなった結果、ルブラン氏と同僚たちは、コモドドラゴンの歯のオレンジ色の部分が確実に鉄であることを発見した。高性能な顕微鏡を使って確認したところ、歯のいちばん外側の白いエナメル質の薄い層に鉄が含まれていたのだ。

「エナメル質の上に実際に鉄がコーティングされていました。ケーキの上にかけるアイシングのようでした」とルブラン氏は言う。

「鋸歯状のところにほとんどの鉄がある点は興味深いです。そこが鉄で補強されていることを示唆しています。獲物を引き裂くために特に重要だからです」とダモーレ氏は言う。