車のダッシュボードにものを置いておくと、ガラスに映りこむ…この「反射」はなぜ起こるのか?

AI要約

物理に挫折したあなたに――。読み物形式で、納得!感動!興奮!あきらめるのはまだ早い。

『学び直し高校物理』では、物理法則が導き出された「理由」を考えていきます。

偏光と反射について詳しく説明しつつ、特殊な眼鏡を使って映り込みを消す仕組みについて解説されています。

光の反射や偏光に関する原理を応用し、人類が画像処理を行ってきた歴史について言及されています。

車のダッシュボードにものを置いておくと、ガラスに映りこむ…この「反射」はなぜ起こるのか?

物理に挫折したあなたに――。

読み物形式で、納得!感動!興奮!あきらめるのはまだ早い。

大好評につき5刷となった『学び直し高校物理』では、高校物理の教科書に登場するお馴染みのテーマを題材に、物理法則が導き出された「理由」を考えていきます。

本記事では〈「屈折」はどのようにして起こっているのか?…アルゴリズム体操から学ぶ「屈折」のふしぎ〉にひきつづき、偏光と反射​についてくわしくみていきます。

※本記事は田口善弘『学び直し高校物理 挫折者のための超入門』から抜粋・編集したものです。

いままでは波の周波数や波長の話を主にしてきたが、波にはほかに別の重要な要素がある。それは「振動の方向」という要素である。

下の2枚の写真は運転席からフロントガラス越しに見た外の景色である。左側の写真にはダッシュボードに置かれた書類がフロントガラスの内側に映り込んでいるが、右側の写真にはこの映り込んだ書類の影はない。

右側のダッシュボードにも書類は置かれたままなのに。どうやったらこんな器用なことができるのか? これはけっして最近はやりの機械学習による画像処理の結果ではない。実はこれは特殊な眼鏡をかけて、映り込みを消しているのだ。

どうしてこんなことが可能かということを説明するにはまず、偏光について説明しないといけない。光は、電磁波の一種であり、電場と磁場が直交した方向に交互に現れたり消えたりしながら進んでいく波だということは説明した。

さてここで直交していて周期がずれている2つの電磁波が同時に存在した場合を考えよう。現実の光は、こんなふうにただの振動じゃなく、螺旋を描きながら進んでいることのほうが多い。こういう光がガラスに当たって反射したらどうなるか?

『学び直し高校物理』のレベルを超える説明になるため、ここでは詳細な説明は省略するが、反射するとき実際に反射するのは反射面に平行に振動している成分だけだ。垂直な成分は反射できない。だから窓ガラスに映っている影は振動の方向が限られている。そこでこの方向と垂直な光しか通らない偏光子という特別なガラスを通して見ると、反射光だけが消えるのでこの窓ガラスのように映ったものだけを消すことができる。

つまり、人間のほうが偏光子に相当する眼鏡をかけると反射光が見えなくなってあたかも反射がなくなったかのように見える。

いまやこんなことができても誰も驚かなくなってしまったが、機械学習を使わなくてもいろいろな工夫をして人類は画像処理をしてきた。多くは物理学の原理を応用して。