リベラルが勝てない要因は「脳の仕組み」にある、人間の脳は加齢とともに「保守化」していく

AI要約

加齢による脳の変化によって、人は他者との共感や異なる意見の尊重が難しくなる傾向がある。

脳の前頭葉の機能が老化によって低下し、思考が保守化することが一般的であり、直情的な行動が増える可能性もある。

老化に伴う前頭葉の機能低下が、人間の思考や行動に影響を与えることが示唆されている。

リベラルが勝てない要因は「脳の仕組み」にある、人間の脳は加齢とともに「保守化」していく

「年を取るとガンコになる」「理性より直感が優先される」「ダイエットしてもリバウンドしてしまう」。これらの現象は、個人の性格や意思の問題だと思われがちですが、実はいずれも脳の仕組みが関係しているといいます。

「人の脳は賢くなりすぎないようにできている」と語る、脳科学者の中野信子氏の著書『新版 人は、なぜ他人を許せないのか?』の中から、加齢と脳の関係や脳のシステムと思考の関係について解説します。

■加齢が脳を「保守化」させる

 できることなら、自分と異なるグループ(アウトグループ)の人の考え方も、ただ「アウトグループだから」という理由で排除したりせず、異なる考え方を尊重し、互いを認め合いたいものです。

 しかしこれは、脳科学的には難しい問題でもあります。実は、どのような相手に対しても共感的に振る舞い、人間として尊重し、認めていくという機能はとても高度なもので、前頭葉の眼窩前頭皮質という領域で行われています。

 ここは25~30歳くらいにならないと成熟せず、さらに、しっかり発達させるためには、相応の刺激(教育)も必要になります。また、重要な部分なのに、アルコール摂取や寝不足といった理由で簡単に機能が低下してしまいます。しかも、その機能が得られるまでには人生の3分の1近い長い時間がかかるのに対し、衰えてしまうのはとても速いのです。

 ニュースなどで見る、いわゆる「キレる老人」を典型的なパターンとして思い描いていただけるとわかりやすいかもしれません。老人が相手に有無を言わせず、自分の倫理だけを信じて、直情径行的に行動してしまうのは、前頭葉の背外側前頭前野が衰えているからかもしれません。

 一般に、加齢とともに思考が保守化すると言われますが、同じ理由で説明できます。実際は、脳が老化したから保守化したということが疑われるのです。

 ここで言う保守化は、政治思想的な保守という意味ではなく、自分が元々持っていた思想の傾向がより純化され、それ以外の意見は自動的に棄却される確証バイアスが働いて、さらに思考が硬直化していく、といったイメージです。