人類が行った「新種誕生という自然破壊」…わずか180年ほどで「地下鉄網に適応した新種」チカイエカという「警鐘」

AI要約

アカイエカは、産卵期になると吸血する昆虫で、皮膚に針を刺して血液を吸う。

アカイエカは細長い口に6本の針を持ち、血液を吸うために命をかけて活動する。

ロンドンの地下鉄は蒸気機関車で運行されていたが、煤や排煙が問題となった。

人類が行った「新種誕生という自然破壊」…わずか180年ほどで「地下鉄網に適応した新種」チカイエカという「警鐘」

アカイエカは、私たちがよく見かける蚊の一つである。ふだんは花の蜜や草の汁などを食べている大人しい昆虫だが、産卵期になって交尾したメスは、動物から吸血するようになる(オスは吸血しない)。卵を作るための栄養分として、タンパク質などが必要になるからだ。

吸血するのはおもに夕方から夜にかけてで、私たちが吐く二酸化炭素や皮膚の匂いや体温などを感知して、やってくるらしい。そして、皮膚に針を突き刺して、血液を吸うのである。

蚊の細長い口の中には、6本の針が仕込まれている。

外側の2本の針の先端にはギザギザした刃が付いており、これで皮膚を切り裂きながら針を刺し込んでいく。次に使うのは管になっている針で、血液が固まらないようにする唾液を注入する。この唾液によってアレルギー反応が起きると、私たちは痒みを感じるのだ。そして、最後に使うのが中心にある太い針で、先端に開いている穴から血液を吸入するのである。ちなみに、残りの2本は、皮膚が開いた状態で固定するために使っているようだ。

こう書くと何でもないが、吸血は蚊にとって命がけの仕事である。血液を吸うためには、どうしても2~3分はかかるし、そのあいだは動くこともできない。私たちに気づかれれば、叩かれたりして命を落とすこともしばしばである。私たちにとってはありがたくないことだが、蚊にとっても死活問題なのだ。

アカイエカは学名をCulex pipiensというが、正確には単一の種ではなく、いくつかの種をまとめた「種群」と考えられている。このアカイエカ種群は南極を除くすべての大陸に分布しており、イギリスのロンドンにも生息していることが知られている。

そのロンドンで世界初の地下鉄が開通したのは、日本がまだ江戸時代の1863年である。産業革命以降、ロンドンで働く人が増えたため、郊外から通勤者を輸送する鉄道が整備されていった。しかし、これらの鉄道は、建物が密集しているロンドンの中心部までは伸ばせないため、地下鉄が建設されたのである。驚いたことに、開業したころは蒸気機関車によって運行されていたという。

一般に、長いトンネルでは、蒸気機関車を使用することができない。煤煙をトンネル外へ排出することが困難なため、機関士が窒息する可能性があるからだ。ロンドンの地下鉄でも地上への排煙対策は強化されていたようだが、それでも駅が煤だらけになったり、木造のホームでボヤが起きたりしたという。

ちなみに、ロンドンよりかなり後に作られた日本の初期の地下鉄(1915年に開通した郵便物運搬用の東京中央郵便局地下電車、1925年開通の宮城電気鉄道、1927年開通の銀座線)は、最初から電化されていた。