北極で「電子の雨」による「20年に一度」の珍しいオーロラを観測、地上からは初

AI要約

ノルウェーのスバールバル諸島で観測された珍しい緑色のオーロラについて、2022年12月の出来事である。電子の雨によるポーラーレインオーロラが地上カメラで初めて観測され、緑色の毛布のような均一な光景が広がっていた。

ポーラーレインオーロラは太陽からの高エネルギー電子によって引き起こされ、極冠上に現れる普通のオーロラとは異なる珍しい現象である。2022年12月25日と26日に観測され、現象の原因や特徴が明らかにされた。

この珍しい現象が地上カメラで初めて観測されたのは2022年であり、同時に取得された衛星データの調査によって、ポーラーレインオーロラの特徴が明らかになった。研究者たちはこの現象を進一歩理解することに成功した。

北極で「電子の雨」による「20年に一度」の珍しいオーロラを観測、地上からは初

 あるクリスマスの明け方近く、ノルウェーの北極圏にあるスバールバル諸島で、魚眼レンズが鮮やかな緑色の夜空を捉えた。ヘビのように細い構造が星座の下で織りなすような荘厳なオーロラとは異なり、ほぼ均一な緑色の毛布のように空一面に広がっていた。

「このオーロラは非常に滑らかな形をしており、緑がかったものがただ広がっているような構造でした。まるで大きな緑色のケーキのようでした」と宇宙物理学者である電気通信大学大学院の細川敬祐(ほそかわ けいすけ)教授は言う。細川氏らは、このオーロラが「電子の雨(ポーラーレイン)」による珍しい現象だと2024年6月21日付けで学術誌「Science Advances」に発表した。

 奇妙なオーロラが北極の空を覆ったのは2022年12月25日と26日だった。細川氏はそれまでにこのようなオーロラを見たことがなかったという。

 オーロラは、太陽から放出された電子が地球の磁場に捉えられて加速されることで生じる。電子は太陽の大気の最も外側の層であるコロナから、太陽風と呼ばれるプラズマの形で放出される。

 太陽風には様々な高エネルギー粒子が含まれているため、通常、太陽風の電子は地球に到達する時点では目に見えるオーロラを発生させるほど十分なエネルギーを持っていない。しかし、いったん地球の磁場に捉えられると、加速されてエネルギーが高まった電子は大気中の原子や分子と相互作用し、オーロラを発生させる。

 こうしてできるオーロラは地球の極付近に現れるが、極冠(極に近い高緯度地域)の上に現れることはほとんどない。

 それに対して、ポーラーレインオーロラは、太陽風がほぼ「やんだ」まれな状況で、太陽表面から直接降り注ぐ電子によって引き起こされる。2022年に観測されたこの現象は、「一方の極冠が太陽コロナから直接降り注いだ電子で満たされているように見える興味深い反例です」と、カナダのカルガリー大学の物理学者で、今回の研究に関与していないデイビッド・クヌーセン氏は言う。「これは非常に珍しい出来事です」

 ポーラーレインオーロラはこれまで衛星データで観測されたことはあったが、地上カメラで観測されたことはなかった。細川氏は、休み明けにオーロラカメラをチェックするという毎週のルーティンを再開したとき偶然、2022年のこのオーロラを発見した。データのバックログを何気なく見直していた際、氏は遅れて届いたクリスマスプレゼントのようなオーロラを見つけたのだ。

「あの奇妙なオーロラを見たとき、私は突然これが特別なものであると気づき、何かをする必要があると思いました。そこで、同時に取得された衛星データを調べ始め、電子の雨を示す特徴を見つけたのです」と細川氏は言う。