骨盤臓器脱、最新の手術法を日本に導入~合併症と再発を防ぐ~

AI要約

骨盤臓器脱について、最新の手術法を導入した病院の院長が治療法の重要性を強調。

従来の手術方法として子宮を摘出する手術があったが、再発率が高く患者にとっても負担が大きかった。

最新のメッシュを使用した手術法(TVM)は合併症のリスクがあることもあり、注意が必要である。国産のメッシュを使用する医療機関もある。

骨盤臓器脱、最新の手術法を日本に導入~合併症と再発を防ぐ~

 子宮やぼうこう、直腸など骨盤の中にある臓器が下がってきて脱出してしまう骨盤臓器脱。重症化すると外出が困難になるなど、日常生活に大きな支障を来し、人知れず悩む女性は多い。最新の手術法を日本で初めて導入した明理会東京大和病院の明樂重夫院長は「骨盤臓器脱の治療法は、この20年で大きく変化していますが、新しい手技を採り入れない施設もまだまだ見られ、医療機関によって対応できる治療法が異なります。どんな治療の選択肢があるかを知って、自分にとってベストな方法を見つけましょう」とアドバイスする。

 ―手術はどのように行いますか。

 骨盤臓器脱の手術は、脱出した子宮を腟から摘出して、ぼうこう・直腸と腟の間の筋膜を補強する手術(従来手術)が100年ほど続いていました。しかし、再発率がかなり高く、患者さんもあきらめているような状況でした。

 骨盤底の再建は子宮だけでなく、ぼうこうや直腸も落ちてこないようにしなければならず、非常に複雑です。しかも、尿や便も出せるようにして、性行為にも支障がないようにしなければなりません。再発が多いので、損傷した骨盤底を補修するだけでは限界があると考えられるようになりました。

 そこで、2004年に骨盤内の臓器をメッシュで支える経腟メッシュ手術(TVM)がフランスの産婦人科医によって開発され、05年に泌尿器科医が日本に導入、その後、泌尿器科のみならず婦人科でも盛んにTVMが行われるようになりました。

 TVMは外陰部の外側2カ所と肛門の脇から太い針を刺して、腟の中に入れた指で引っ張り出し、手探りでメッシュを張っていく手術です。この手術法が盛んに行われるようになると、長年、人知れず悩んでいた女性が手術を希望するようになり、中には手術が2年待ちというほど殺到しました。

 ところが、次第にメッシュで尿管を巻き込んで尿閉を起こす、メッシュが腟から出てくる、術後の痛みが続くなどの合併症のリスクが分かってきたのです。骨盤臓器脱の患者さんの腹腔(ふくくう)内の状態は、臓器が下がってきていて、それぞれ個人差が大きいため、手探りでメッシュを張ると、予想外の合併症を起こす可能性がありました。そのために米国で訴訟が増え、米食品医薬品局(FDA)は2011年にTVMに対する中止勧告を行い、米国からのメッシュが供給されなくなりました。

 日本でも現在は施行数が減ってきましたが、国産のメッシュを使って、合併症を起こさないよう注意しながらTVMを行っている医療機関もあります。