心移植に東京医科歯科・岡山・愛媛の3大学参入へ…医療のひっ迫改善に期待

AI要約

脳死下の臓器提供件数が増加し、東京医科歯科大、岡山大、愛媛大が心臓移植を実施する方針を決定。これにより全国の心臓移植施設数が増え、移植医療体制の改善が期待される。

移植施設が増えることで待機患者の偏りが緩和され、臓器の受け入れを断念する問題が解決される可能性がある。個々の移植施設の受け入れ態勢の充実も求められている。

医療機関は日本循環器学会などの協議会と日本医学会の委員会を通じて心臓移植施設として認定される必要があり、その後臓器移植ネットワークが登録を行う。

 脳死下の臓器提供件数が増える中、東京医科歯科大、岡山大、愛媛大が新たに心臓移植を実施する方針であることが27日、分かった。日本心臓移植学会が今月発表した緊急調査では、移植施設の人員や病床が不足し、脳死者から提供された心臓の移植を断念した例が、2023年に16件あった。3国立大の参入により、心臓の移植施設は全国14か所に増え、移植医療体制の逼迫(ひっぱく)の解消につながることが期待される。

 東京医科歯科大は、東京大から約1キロの近距離にある。東大には、移植を待つ患者が集中し、23年の心臓移植の断念例16件のうち15件を占めた。東京医科歯科大では東大との連携を視野に、移植チームづくりを急ピッチで進めている。今年10月に東京工業大と統合し「東京科学大」になることが決まっており、心臓移植を実施することで、新大学の実力のアピールにつなげる狙いもある。

 岡山大は現在、肺、肝臓、腎臓の移植を担う。脳死下の臓器提供例は国内最多の実績を持つ。心臓移植施設となれば、中国地方で唯一となる。愛媛大は四国初の心臓移植施設となる。

 医療機関が心臓移植を行うにはまず、日本循環器学会などでつくる協議会の推薦を受け、日本医学会の委員会で選定される必要がある。その上で、臓器あっせん機関「日本臓器移植ネットワーク(JOT)」が、移植施設として登録すると実施できる。

 東京医科歯科大、岡山大は来年度にも協議会への申請を行う。JOTによると、愛媛大は登録まで済ませ、実施に必要なシステムの導入などを準備している。

 心臓移植に詳しい福嶌教偉(ふくしまのりひで)・千里金蘭大学長(看護学、心臓血管外科)の話「移植施設が増え、待機患者の偏りが緩和されれば、臓器の受け入れを断念する問題を解決する一助となる。併せて個々の移植施設の受け入れ態勢の充実も図ることが求められる」

 臓器移植法の運用指針に基づき、医療機関が、臓器ごとに組織される学会協議会などに申請し、選定される。その後、JOTが施設として登録すると移植を実施できる。心臓の場合、2020年、国立成育医療研究センターが登録されたことで11施設になった。