なぜ「たかが石ひとつ」が地球に落ちただけで恐竜が絶滅したのか…庭先に落ちた岩と巨大隕石の差は何?

AI要約

物理学で重要なエネルギー保存則について解説。エネルギーがどのように保存されるか、具体的な例も挙げながら説明。

エネルギー保存則は、摩擦などによって形を変えながらも物理系内で常に保たれる。エネルギーが失われるわけではない。

力学的エネルギーが熱エネルギーに変わる例を通じて、エネルギー保存則の重要性を理解。摩擦がエネルギー変換にどのように関与するかも説明。

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物理に挫折したあなたに――。

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 大好評につき5刷となった『学び直し高校物理』では、高校物理の教科書に登場するお馴染みのテーマを題材に、物理法則が導き出された「理由」を考えていきます。

 本記事では、力学編からエネルギー保存則についてくわしくみていきます。

 ※本記事は田口善弘『学び直し高校物理 挫折者のための超入門』から抜粋・編集したものです。

 高校の物理をまったく理解できなかった人でも「エネルギー保存則」を習った記憶はあるはずだ。教科書的な説明をすると、外界との相互作用がない系では、エネルギーの総量は増えたり、減ったりすることなく、つねに一定で変化しないという法則だ。

 エネルギー保存則は高校の物理学で学ぶもっともたいせつな法則であると言っても過言ではない(紛らわしいが、『学び直し高校物理』Chapter5で説明した「運動量保存則」とは別の法則である)。

 高校の力学分野で登場する多くの法則は、ほかの分野、たとえば電磁気学や熱力学などには直接関係はないが、「エネルギー保存則」だけは例外で、それらの分野でも重要であり続ける稀有な法則だ。

 しかし「エネルギー保存則」は、その意味する内容がわかりにくい。そもそもエネルギーとはなんだろうか。

 辞書を引くと、「物体や物体系がもっている仕事をする能力の総称。力学的仕事を基準とし、これと同等と考えられるもの、あるいはこれに換算できるもの。力学的エネルギー(運動エネルギー・位置エネルギー)、熱エネルギー、電磁場のエネルギー、質量エネルギーが代表的なもの」(大辞林)とある。

 うーん、なんだかわかったようでわからない曖昧な説明だ。

 エネルギーは使ってしまえばなくなってしまうように見える。たとえば、床の上でボウリングの球を転がす場合、最初は勢いがあるのでエネルギーが保存されているように見えるが、いつしかエネルギーは失われ、ボウリングの球は徐々に遅くなる。「エネルギーはちっとも保存なんかされていないじゃないか!」と思われても不思議ではない。

 しかし、エネルギー保存則は、きちんと守られている。実際には、球の運動エネルギーは、床と球の摩擦によって熱という別のエネルギーに変わってしまっただけだ。一見すると、エネルギーが失われたように見えるのは、一度熱に変わってしまったエネルギーは取り出すことが難しく、再利用できないためだ。

 繰り返し言う。同じ系では、エネルギーはけっして失われない。消えてしまったようなときは、形を変えただけだ。力学的エネルギーはしばしば熱に変わる。実際のところ、摩擦とは、力学的な良質のエネルギーを熱という再利用しにくい形に変えることと言っても間違いではない。