お湯のほうが水より早く凍る!? 業界騒然の「ムペンバ効果」は中学生の発見だった!

AI要約

ムペンバ効果とは、熱い水が冷たい水よりも早く凍る現象のことであり、その正体は温度のムラにあることが判明した。

発見者のムペンバくんは熱い水が早く凍ることを実験で確かめ、物理学者らの間で50年にわたり論争が続いた。

2020年になり、水の分子の運動を観察した結果、ムペンバ効果の原理が温度のムラにあることが解明され、革新的な応用が期待されている。

お湯のほうが水より早く凍る!? 業界騒然の「ムペンバ効果」は中学生の発見だった!

科学の世界は日進月歩。パパママの時代の常識が「過去の学説」となっていることも。最新サイエンスを大人たちがキャッチアップすることで、子どもたちの科学センスも磨かれます。「ゆーまん博士」の漫画で、最新科学をキャッチアップしましょう!

氷を作る時、製氷皿には水を入れます。製氷皿にお湯を注いで冷凍庫に入れる人はいないと思います。他の冷凍食品が溶けちゃいそうですしね。

リカちゃんの家族もそう考えますが、ゆーまん博士は違うと言います。熱いお湯のほうが早く凍るのだそうです。どういうことでしょう? お湯が水より早く凍るなんて、魔法じゃあるまいし、不可思議です。

お湯が水より早く凍る現象は「ムペンパ効果」といい、ウソだホントだと長らく論争が続いていました。

お湯が冷たい水よりも早く凍るという不思議な現象がムペンバ効果です。

1963年、アフリカ・タンザニアの中学生3年生エラスト・B・ムペンバくんは、友だちと一緒にアイスクリームを作っていました。

みんなで使っていた冷蔵庫の冷凍室が小さく、急いで作らないと冷やす場所がなくなってしまいます。ムペンバくんはアイスクリームの原液が冷えるのを待ちきれず、熱いままで冷凍庫に入れました。別の子は牛乳を沸騰させずに材料を混ぜただけで冷凍庫に入れました。

驚くべき結果が待っていました。ムペンパくんが熱いままで入れた原液はアイスクリームになって固まっていましたが、材料を混ぜただけで沸騰させなかった原液はまるで凍っていなかったのです。

ムペンバくんは物理の先生に、なぜ熱い原液のほうが混ぜただけの冷たい原液より早く凍ったのか、質問しました。先生は「そんなことはありえない」と笑いました。それはそうです。熱いお湯のほうが冷たい水より早く凍るなんて、考えられません。

ところがです。ムペンバくんはアイスクリームを作って売っている先輩に聞いたところ、熱いままで冷やしたほうが早く凍るというのは、アイスクリーム売りでは常識だと言われたんです。

熱いほうが早く凍るのか、冷たいほうが早く凍るのか、本当はどっち?

1969年、アフリカ野生生物管理大学の学生になったムペンバくんは、あきらめることなく熱い水が冷たい水より早く凍ることを実験でたしかめると『Cool?(冷たい?)』という題名で論文を書き上げました。

この論文をきっかけに、熱い水が冷たい水より早く凍る現象は『ムペンバ効果』と呼ばれるようになり、世界中の学者が本当かどうか調べ始めました。

科学では同じ実験をすれば同じ結果が出ると正しい実験だとされます。でもムペンバ効果の実験はまったく同じ条件でも、熱い水が早く凍ることもあれば冷たい水が早く凍ることもあり、なぜそんな違いが起きるのか誰にもわからないまま、50年が過ぎたんです。

中には実験もせずに、そんなことがあるわけないと否定する物理学者も多かったんです。案外、科学者というのは頭が固いんですよね。

2020年、アメリカのサイモン・フレイザー大学のアビナシュ・クマールらは、水の分子の運動を観察している中で、ムペンバ効果がどのように起きるのか、その原理を発見しました。

答えは温度のムラにありました。液体の中に熱い部分と冷たい部分がある時だけ、熱い部分が急激に冷たくなるんです。これがムペンバ現象の正体でした。

将来、ムペンバ現象を自由に扱えるようになれば、車のエンジンから原子炉まで、すべての熱機関に革命が起きるでしょう。ムペンバくんのあきらめない姿勢が、大発見につながったんです。

●熱い水が冷たい水より早く凍るのは、温度のムラが原因

●直感的にはありえないと思えることも、実験してみないとわからないこともある

●子どもの「なぜ」は、子どもといっしょに考えよう