なぜ東北の火山分布は「すき間だらけ」なのか…その謎を解く、驚きの「マグマの熱い指」仮説

AI要約

地球表面を構成する岩石の謎に挑む岩石学者の研究に焦点を当てた書籍が刊行された。

地球に存在する特異な安山岩の起源について解明が進められている。

日本列島の火山活動を例に挙げ、プレート沈み込み帯におけるマグマ形成プロセスについて詳細に説明されている。

なぜ東北の火山分布は「すき間だらけ」なのか…その謎を解く、驚きの「マグマの熱い指」仮説

 地球の大陸は謎だらけ。

 地球表面を構成する岩石は、海洋底と陸で明確に異なる。火星や金星の表面を覆う岩石は、地球の海洋底の岩石と同じ「玄武岩」。地球の陸地を構成する「安山岩」は、火星や金星には存在しない。ほかの惑星には存在しない安山岩に、地球表面の3割が覆われている。

 地球にはなぜ安山岩があるのか? 

 岩石学者の田村芳彦氏がその謎に挑んだ書籍『大陸の誕生 地球進化の謎を解くマグマ研究最前線』が講談社ブルーバックスから刊行された。刊行を記念して、本書の読みどころを厳選してお届けする。

 ※本記事は、『大陸の誕生 地球進化の謎を解くマグマ研究最前線』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。

 日本列島には火山が多く存在しますが、それは、この場所がプレートの沈み込み帯だからです。列島の下には、太平洋とフィリピン海プレートが沈み込んでいます。

 前の記事でみたとおり、プレートの沈み込み帯では、上盤プレート上に火山を形成するマグマの発生が誘発されます。上盤プレートのマントル内(マントルウェッジ)で加水と減圧の2条件が同時に満たされ、岩石が溶けるのです。

 沈み込むプレートが地下に水を持ち込み、ある程度以上の深さでそれをマントルウェッジに放出します。これが加水に相当します。

 また、沈み込むプレートに引きずられ、上盤プレートの下側(プレート境界周辺)には下向きの動きが生じます。その反動として、マントルウェッジの中ほどでは上向きの流れが生まれます。岩石が深いところから浅いところへ移動するので、減圧を受けることになります。

 水が加わり、上昇流(減圧)が生じたマントルウェッジでは、岩石が溶けやすくなります。同じ沈み込み帯であれば、加水と減圧という2つの条件が満たされる深さは一定です。マントルウェッジ内の同じ深さで、マグマが発生するということです。

そのため、沈み込み帯には特徴的な地形が形成されます。