織物の産地で人気の「タフティング教室」。〈小川染色〉の糸でオリジナルのラグをつくろう

AI要約

タフティングとは、電動工具を使って布に毛糸を打ちつけてラグや小物を制作するハンドメイドの技術で、愛知県一宮市の小川染色でも注目されている。

タフティングは、親子や高齢者にも楽しめるものづくりであり、自由なデザインでオリジナルな作品を作ることができる。幅広い年代の参加者がいるため、人気が高まっている。

小川染色では、コロナ禍の中でタフティングを始めることで新たなビジネスチャンスを見出し、中村依純さんがUターンし、事業に参加。糸の魅力を伝える取り組みを行っている。

織物の産地で人気の「タフティング教室」。〈小川染色〉の糸でオリジナルのラグをつくろう

近年、日本でも注目されつつある「タフティング」。電動工具を使って布に毛糸を打ちつけ、ラグや小物を制作するハンドメイドのこと。カラフルな糸と好きなデザインで、オリジナルなラグを自由自在につくることができます。

尾州(びしゅう)織物の産地として有名な愛知県一宮市にある〈小川染色〉では、カラーバリエーション豊富な自社染めの糸を使ったタフティング教室を開催。工房の壁には124色もの糸が並び、カラーチャートを眺めているようなワクワクした気分に包まれます。

■タフティングは、親子や高齢者にも楽しめるものづくり

「工場敷地内の小屋を改修して工房をつくり、2022年からワークショップを開始しました。色、かたち、デザイン、サイズが自由に選べ、世界にひとつだけのオリジナル作品が老若男女関係なくつくれるのもタフティングの魅力だと思います。これまでにも、小学生から80代までの幅広い年代の方が参加してくださいました。体験希望者も増えているため、6月には、6名まで同時に体験できるスペースに拡張予定です」と中村さん。

タフティングは、手作業の刺繍とは違い、一方向にタフティングガンを打ち込んでいくことで、絵を描くようにデザインを仕上げていくことができます。インターネットが中心の世の中となり、バーチャルが日常的になっている今、素材にふれながら遊び感覚でできるタフティングは、豊かな感性を取り戻してくれそう。「私自身もタフティングをやるようになってから、夢中でキャンバスに向かうので、スマホを手放す、デトックス時間となっています(笑)」と中村さん。

■会社の危機を救ったタフティングを通して、新たに糸の魅力も伝えていきたい

コロナ禍で取引先からの注文が半減した〈小川染色〉では、個人消費に活路を見いだそうと、インターネットで見つけたタフティングに注目。安藤孝俊社長が、当時、福岡で働いていた次女の中村依純(いずみ)さんに、試作を依頼したのが始まりなのだとか。しかし、まだ日本ではタフティングの情報もほとんどなかったため、依純さんは海外のYouTubeを見ながら、試作を繰り返したそうです。それが思いのほか楽しく、新しい視点やアイデアを提案しながら、家業を成長させていきたいとの思いもあり、本格的に会社の事業に関わろうと愛知県へのUターンを決意されました。

「幼い頃は、家が工場に隣接していたので、機械音や染色に使用する助剤の独特な匂い、山のように積まれた糸など、どれも当たり前の景色で、特別なものだとは思っていませんでした。父に仕事の話を聞くこともなく過ごしていたので、タフティングの相談を受けなければ、関心がないままで終わってしまっていたかもしれません。うちの糸は、特殊な機械で染色しているため、風合いがよくやわらかいんです。手ざわりの感触も心地よい。そういった曾祖父の時代から長年受け継ぎ、築いてきたものづくりに関わることができ、誇りを感じています」と中村さん。

■自分の生まれ育ったまちの歴史を知ることで、新たな可能性を見いだせた

中村さんの父である安藤社長で3代目となる〈小川染色〉。一宮市が繊維産業で栄えていたことから、素材である糸を染色する会社もかつてたくさんあったのだとか。それが高度経済成長で、安価な繊維が、海外から輸入され、繊維業界は衰退の一途をたどってしまいました。