「国内で5本の指に入る生産地になるのでは」希少な国産の漆 新たな地域産業資源として期待
日本国内で希少な国産の漆が取れる北杜市で、漆製品の製造が始まっています。
漆はウルシの樹液を精製したものであり、漆かきの職人が丁寧に採取しています。
北杜市では漆の植栽が進められ、将来的には国内屈指の漆の生産地になる可能性があります。
美しい色つやを出す「漆」は国産のものがほとんどありません。
こうしたなか、山梨県北杜市を「漆」の産地にしようという動きが形になり始めています。
独特な光沢と深みが美しい漆の製品。
腕時計ブランドKnotの商品の文字盤に塗られているのは、希少な「国産の漆」です。
しかも「北杜市で採取された漆」が使われています。
中山哲哉さん:
「これが漆の木です。今回、日本で数少ない漆かきが長野から採取しに来てくれた」
漆は、ウルシの幹に傷をつけ、そこから滴る樹液を精製したものです。
樹齢10年以上ないと樹液が採取できない上、1回に1本の木からとれる樹液は200gほどしかありません。
漆かきの職人が一滴を丁寧にすくっていきます。
漆の普及や製品開発を行う 中山哲哉さん:
「漆は縄文時代から日本人が付き合ってきた非常に優れた素材。先人たちが植えたのが偶然発見されて(樹液が)採取されている状況」
北杜市内にはウルシの木が点在していて、その理由は武田信玄公にもあるようです。
ーなぜ北杜市にウルシが?
漆の普及や製品開発を行う 中山哲哉さん:
「強い戦国武将がいる地域では必ず(よろいなどに使う)軍事物資としてウルシの植栽が行われてきた経緯がある」
「ここ山梨県も戦国時代といえば『武田信玄公』がいるので、その名残が現代こうやって残っていると考えられている」
今は岩手や茨城などで漆が生産されていますがその量はわずかで、中国など海外からの輸入に頼っています。
しかし2015年、文化庁が国宝などの修繕に原則、国産の漆を使うと打ち出したことで、国産漆の生産拡大が求められるようになりました。
そこで漆製品の開発などに携わる北杜市の中山哲哉さんは市を漆の生産地にしようと「印伝の山本」などと2018年から植栽を始めました。
耕作放棄地などを活用し植えたウルシは市内3か所であわせて1000本以上。
あと4、5年すれば樹液がとれるようになるといいます。
漆の普及や製品開発を行う 中山哲哉さん:
「日照時間が長い地域で成長が早く、順調に育っている」
「(漆の生産に)非常に向いている。適地だと思う。国内でも5本の指に入る生産地になるのではないか」